絵理とパブロの近づく心

谷川家では、料理当番がある。

今日は、絵理の当番だ。


「ごめんね、買い物付き合わせちゃって」

「ん?…全然…」

「…って顔してないね」

絵理は笑った。

絵理とパブロはスーパーに向かっている。

和美に、夕飯の材料買いに行くなら、お米を買って来るように頼まれた。

絵理だけじゃ、持てないから、パブロについてきてもらった。


「何食べたい?」

「カレー」

「即答だね」

「前に食べて美味しかったから…」

「作った事あったっけ?」

「ううん、魔法界で。誰かのお母さんが作ったやつ食べて」

「へぇ。おじいさんは作らなかったんだ」「魔法で作るけど、不味いの」

「アハハ。魔法で味の調整はできないんだ?」

「美味しい味と作り方の記憶ないと、ダメなの」

「そっか」


スーパーに入るといつもの音楽が流れてる。

「じゃ、カレーの材料買おっか」

「うん」

パブロは嬉しそうだった。

それが可愛くて絵理は少し笑った。

「…バカにしてる…」

「え?してないよ」

「嘘だ」

「可愛いって思って」

絵理の言葉にパブロは少し赤くなった。

それを見て絵理も赤くなった。


「あっ!シメジ通り過ぎた」

絵理は、カートを押してもどる。

お互い、少し気まずかったので助かったと思った。

「人参、じゃがいも…。玉葱はうちにあるし…。ねぇ」

「ん?」

「前に食べたカレーって何カレーかわかる?」

「何カレーって?」

「お肉とか海老とか入ってなかった?」

「わかんない…」

「…そうなの?」

パブロは何か恥ずかしくなってきた。


「私もね…」

「え?」

「お母さんのカレーがね、どんなのか覚えてなくて。美味しかった記憶はあるんだけど、何が入ってたとかは全然…」

絵理は切なそうに言った。

「パブロも一緒なら良かった…。忘れてても大丈夫だったんだ…」

パブロは絵理の顔を見た。

「でねっ」

絵理が急に振り向いたので、パブロはびっくりした。

絵理もパブロが自分の顔を見てた事にびっくりした。

目がバッチリ合った。

「…あ。…でね。私は、一番ビーフカレーが好きで。安くなってたら、ビーフがよくて…」

「うん…」

「あの…。お肉コーナー行こ」

絵理はカートを押して先に行く。


「…安くないや。残念」

今日は国産の牛肉しか残ってなかった。

「ないの?」

「高いのしか残ってなかった。そしたら、鶏肉かな…」

パブロは牛肉をヒョイとかごに入れた。

「だめだってー。予算オーバー」

「俺が買うの」

パブロはニヤっとして絵理を見る。

「…」

「だから、プレゼント」

「あっ、あぁ」

「バイト代あるから…」

「ありがとう…」

パブロは絵理があんまり嬉しそうじゃないから、言わなきゃ良かったと思った。

「ありがとう」

絵理はもう一回言った。

「最近の中で一番嬉しい…」

「え?!」

「え?変?」

「いや、なら良かった。そんなに嬉しくないのかと思ったから…」

「あぁ。嬉しすぎて言葉を失ってたわ」

「ハハッ」

パブロは絵理がそう言ってくれて安心した。


「じゃ、レジ行こ」

「絵理、お米!」

「あっ!そうだった」

「俺が気づいたっ」

「子供かっ」

2人で、笑いながらお米をカートに乗せた。



「おかえりー。バブロ君荷物持ちありがとう」

和美が玄関まで、やってきた。

「いやぁ、全然」

「ほんと全然だよ」

「何で絵理が言うんだよ」

「お姉ちゃん、パブロね持ってないの、浮かしてるだけ。しかも、家つく直前にネタバラシするんだよ」

「いいじゃん」

「魔法使ってるってわかったら、私の袋も持ってもらったのに」

パブロは誤魔化すように、横向いて黙った。

「私のだって重かったんだけど。お米持ってもらってるからって頑張って持ってたのに」

「絵理ちゃん」

「呼び方気持ち悪い」

「魔法に頼って楽してちゃ、だめだよ」

「お前が言うな」

「ろくな人間にならないよ」

「…そうだね」

パブロをジッと見て言う。

目線に気がついて、

「おいっ」

パブロが突っ込む。


「アハハッ。仲いいねー」

和美がからかう。

「よくない!」「よくね~し」

2人同時に言った。

「わかったから、手、洗って、2人で夕飯作ってきて」

「え?俺も?」

「うん。そろそろ、当番に入ってもらいたいし、練習?」

和美は少し意地悪そうな感じで言った。

「私が教えるの?」

「そりゃそうでしょ」

「えー?」

「はいはい、文句言わない。よろしくね~」「はーい…」

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