第2話 姉貴


 獅童海斗は邪魔だ。獅童家を継ぐのは私、獅童桜子である。夜な夜なバイクで走り回り今回はバイクに細工をしてあったから今頃死んでるんじゃないかしら?

「桜子姉さん、ただいま」

「えぇ!お、おかえり」

 なんで怪我一つしてないわけ?しかも桜子姉さんなんて何年振りかに聞いたわよ。まさか私が細工したのがバレてる?そんなはずはない、私付けのメイドにやらせたのだから。

「なにビックリしてんだよ?まさか死んだとでも思ったのかい?」

「そ、そ、そ、そんなわけないじゃない。あんたが桜子姉さんなんて呼ぶからでしょ」

「あっそ、犯人は大体わかったしゆっくり寝られるわ」

「な、なにが犯人よ!私じゃありませんからね」

「なんの?って言っても別に構わないか」

 くそっクソ!海斗の癖に余裕ぶって何様よ!しかもあの数のメイドをなんで従えてるわけ?ま、まさか、種付け候補じゃないでしょうね?ふざけんじゃないわよ!そんな事になったらこの家継ぐのは海斗になるじゃないの!

「に、してもメイドをそんなゾロゾロ引き連れて何しに行くのかしら?」

「勝手に着いて来てるだけだよ」

「執事の小坂井までいるじゃない」

「私は次の跡継ぎ、海斗坊ちゃんについて行ってるだけです」

「はぁ?次の跡継ぎは私にも権利があってよ」

 バカにしてるのかしら、執事は平等であるべき存在なのに。

「今日から海斗坊ちゃんは跡継ぎになられましたからもう桜子様には無理かと思われます」

「な、何偉そうな事いってるのよ!あんたは平等に獅童家の跡取り候補の執事でしょうが!」

「ふっ、あの海斗坊ちゃんが大人になりました。これも桜子様のお陰かと思われますがね」

 バイクの事がバレてる?てか、大人になったですって!

「海斗!どう言う事ですか?!」

「はあ?どうもこうも僕にもよくわからねぇよ。童貞捨てただけで大人とかおかしくねぇか?」


 ど、童貞を捨てたですって?なら種付け解禁されてしまったのね。だからか、だからみんな海斗についていっているのね。

「種付け解禁はお父様達はしっているの?そこまではまだ話が行ってないんじゃない?それなのに侮辱された私はあなたを解雇するわ!小坂井!」

 まだ小坂井と言うブレインをどうにかすれば、海斗の馬鹿には跡継ぎとして振る舞えるわけがない!

「小坂井さんは大事な執事だろ?姉さんはヒステリックだな、小坂井さんは僕付けの執事にするからそれでいいよな?」

「だめです!まだ平等な執事たる小坂井を自分のものにできるわけがないでしょう!」


「なにを騒々しい、一体全体どうしたと言うのですか?」

「お、お母様」

「お母様、ただいま」

「まぁ海斗がただいまだって、何年振りかしら!長い反抗期でしたわ」

 涙を流して喜ぶお母様を鬱陶しく思う、このままだと小坂井を取られてしまう。

「お母様!執事たるもの平等でなければいけませんよね?私はさっき侮辱されたのです。解雇してくださいまし!」

「あら、小坂井が?小坂井、なんて侮辱したのですか?」

「桜子様には悪いと思いますが海斗様のほうが跡継ぎに相応しいので、私はいまから海斗様に着かせて頂きますと」

「それは何故?」

「海斗様が大人になったのです」

「まぁ!まぁまぁ!お赤飯を炊いてちょうだい!やっとなのね!」


 あぁ、もうだめだ。海斗を亡き者にしようとした罰なのかも知れないわ。ここまで味方がいなくなるなんて…いや、まだだわ!

「海斗が大人になったのは誰とですの?その女を連れて来なさい!」

「あ、そうね、それは大事な事だわ」

「チマとアチャコ?連れてこれるのか?」

「はい、連絡先は知っておりますので明日にでも」

 やった!明日までになんとかすれば!

「やはりまだ海斗が跡継ぎと決まった訳じゃないじゃない!小坂井!解雇ね!」

「桜子?解雇は言い過ぎよ?それに明日になればわかることなんだし」


「はぁ、小坂井さんが邪魔なわけだ?僕のバイクを弄って殺そうとしたくらいに!」

「な、な、なんてことを言うの?」

「だってそうなんだろ?三輪バギーがあんな壊れ方するわけないだろ?桜子姉さんを捕まえろ」

 メイドが殺到してすぐに縛り上げられる。

「こんなことしてあなた達いいと思ってるの?」

「海斗坊ちゃんの命令ですから」

「桜子姉さん?なんでバイクに細工したの?誰に頼んだんだ?」

「な、な、なんのことよ?」

「しらばっくれてもしょうがないと思うけど、そこのメイドがブルブル震えてるもんな?」

 メイドは土下座をし、

「桜子様には逆らえません、どうか御慈悲を」

「やらかしてくれたなバカ姉貴?」

「バカ姉貴?あなた、誰に向かって言ってるのかわかってるの?」

「死に損なったのがそんなに悔しいですか?」

 私にはここから逆転する方法が思いつきませんわ。

「いかようにでもしなさい」

「はいはい、ならメイドさん達は離していいよ。お姉さんもこれ以上無理なの分かったでしょ?でも次はないからね」

 鋭い眼光で見られて、私は。

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