ミツバチってスゴイんだよ

 いぶきは寝る時、強く願った。

「ミーヤ、夢に出てきて下さい。私、たくさん話をしたいの」


 願いがかなったのか、その日からミーヤは毎日のようにいぶきの所にやってきた。そして一方的いっぽうてきに話をした。いぶきはそれを聞いてる事しか出来なかった。

 ミーヤはこんな事を言った。東先生の声だった。


 🐝


 ミーヤは僕の分身ぶんしんで、僕の心の声を届けてくれてるんだ。


 不思議な話をする前に、ちょっとミツバチの事を知ってほしい。

 ミツバチってスゴイんだよ。もう、スゴイなって思う事だらけなんだけど、その中のほんの少しだけでも話させてね。


 ミツバチはひとつの巣に1匹の女王バチと数千~数万匹のハタラキバチ、数百~数千匹のオスバチが住んでいて、それが1つの家族なんだ。ハタラキバチはみんなメスなんだけど、子供を産むことができるのは1匹の女王バチだけだから、彼女がその巣の全員の母親なんだよ。

 そしてその家族が1つの生命体せいめいたいのように、それぞれが自分の役割やくわりたすことで成り立ってる。


 女王バチの仕事は卵を産む事だけで、オスバチと交尾こうびませると、毎日毎日1500~2000個も卵を産みつづけるんだよ。

 それも機械きかいのように産みつづけるんじゃなくて、取ってくる事ができるミツの量とか子供を育てられる環境かんきょうに合わせて、ハタラキバチによって産む卵の数がコントロールされているんだって。


 オスバチは、女王バチに精子せいし提供ていきょうする事だけが役割で、それ以外は巣の中でぶらぶらしてるだけなんだ。食料もハタラキバチからもらって生きてるんだけど、交尾をしたオスバチはその場で死んでしまうし、できなかったオスバチは秋になって食料が減ると巣の外に追い出されて死んでしまうんだ。


 ハタラキバチの仕事はたくさんある。羽化うかしてからしばらくの日々は巣の掃除を、そのあとに幼虫の子育て、次に巣づくりの日々を送る。そして、花粉をつぶしたり蜜を運んだり巣の中での仕事をする。その後ようやく食料を調達ちょうたつするために巣の外へ出かけるようになる。

 これらは初めから決まっている事で、そしてそれがずっと繰り返されている。どのハタラキバチもそうなんだよ。


 そうそう、これはミツバチに限った事じゃない。自然の中で生きるものたちはみんなオートマチックにうまく動いているんだ。


 ミツバチのダンスって聞いた事ある?

 花粉かふんみつを集めてきたハタラキバチは、花のある場所をダンスで仲間に伝えるんだ。そのダンスで花のある場所の方角ほうがく距離きょりを知る事ができるんだって。


 いぶきはミツバチの巣を見た事がある? ほら、いぶきの足にはってあるシールみたいなやつ。ちょうどあんな感じなんだ。

 自分の体内で作り出したロウで作った巣は、それはそれは美しく、効率こうりつ良く作られている。

 六角形の巣室すしつ隙間すきまなく並べる事ができるから、最小限さいしょうげんの材料で広い空間を作れる。


 この六角形を並べた形のことを人間は構造こうぞうって呼んでるんだけど、これは英語でミツバチの巣の意味。


 とっても軽くて丈夫に出来る形として知られていて、僕たちの身の回りにも色んな所に使われてるよ。

 飛行機のつばさとか人工衛星じんこうえいせいかべにも応用されているんだって。

 いぶきの足にはってある物も、ハチの巣をヒントに作られた物なんじゃないかな。傷の保護ほごが目的なんだけど、えきを吸収する力にすぐれているし、傷も観察しやすいように作られているんだよ。


 ミツバチについての研究が進んだおかげでたくさんの事が知られるようになったけど、それらはまだまだほんの一部分だけ。

 ミツバチには、人間に知られていない不思議な能力が、まだまだた〜くさんあるはずなんだ。

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