第35話 冬支度

縹色はなだいろの 冬空は

揺らぎがないから


見上げたビル

との 

直線すぎる境界線


リノリウムを 切って貼り付けた

その装いに

見慣れた街が 箱庭じみる


円熟した青に憧れる素振りなど 

微塵もみせず

雲の時計を 根こそぎ根絶やし

あまりにも 空色の空


パリンと 割れてしまいそうだ


静止する 夢物語

紛れ込んでしまった 異星人

わたしは

無重力の中 遊泳する


ああ いっそ 

輪郭に沿って 割ってみようかしら


駄菓子屋の 型抜きみたく

なめてかかると

これが 存外 難しい


ぱきぱき 大胆に 

ちみちみ 慎重に 


そうして 手に入れた

澄んだ カケラを口にすれば

すぅっと 冷ややかに

咽喉もと 滑り落ちてゆく


本物の すかっ


見事 臓腑に収め 

重力を取り戻す


わたしの

冬時間が 動き始める


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