第19話 シュリーレン現象

蓋をしてしまいたいの


あの人たちの 笑い合う 楽しそうな声

指を咥えて みてる きいてる


なぜ あれはよくて これはダメなの

なにが違うというのでしょう


そんなことすら理解わからない から かしら

いいえ 多分

理由なんかあるようで 結局ないのです


なんか違う

これは 要らない

それだけなのです


混じりたいのに 

まるで 溶け切らない砂糖


じゃみじゃみ 嫌な 音をたてる


見たくない

知っているけど 知りたくないの


慌てて 再結晶化 しようとしたけど

氷砂糖の 高潔さにはほど遠く


醜くて みすぼらしくて


ゆらゆら 無駄に

昼間の睡眠を貪る 

底に澱んだ 透明な濁流


蓋をして 手に取り 光へ透かす

他人事みたいに ひとしきり眺める

  

もしも0.9%の塩水だったら

そんな詮無い思いは ピンと弾き飛ばす


見えないように 奥へ奥へ

立ちのぼらないよう 揺れないよう そうっと


誰もみてない 歯牙にも掛けない

ああ それでもやっぱり 

気づかれないで 密やかに


いつものように いつもの場所へ 


こっそり 静かに 潜ませた






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0.9%の塩水… ヒトの体液とほぼ等張に調製された生理食塩水。目や鼻をこれで洗うと痛くない。

ヒトに自然に馴染むものとして…



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