第12話 悪くない



「これより大会の表彰式を行います!優勝したチームは壇上にお上がりください!」



大会も終わり、表彰式が行われている。

橘さんが最後の大将も圧倒的な強さで倒して僕達は今壇上にいる。2人のおかげで大会に

優勝したのだ。



「さぁ本日のMVP、あの大魔神兄弟を完全封殺した橘さんに今のお気持ちを伝えて貰いましょう!橘さんお願いします!」


観客から盛大な声が上がっている。みんな橘さんに魅了されたのだろう。


「は、はい た、橘 未来です… 今回はチームメイトの2人に支えてもらい優勝する事が出来ました… とても嬉しいです…」


橘さんはとても照れていた。まだまだ緊張癖は抜けないらしい。でも、観客も僕達も皆で祝福の拍手を送った。 間違いなく一番強かったのは橘さんだった。



表彰式も終わり会場では対戦会が行われていた。橘さんや西蓮先輩、大魔神兄弟も小学生の子たちや初心者の子たちと対戦をしている。 こういったイベントも格ゲーを盛り上げるのに貢献している。





「やぁ 中山君 きみも流石の強さだったよ」


話しかけてきたのは実況のKンヤさんだ。

この人の実況で大会も盛り上がっただろう。



「Kンヤさん実況お疲れ様です。僕は1回戦しか出てないですし、ほとんど2人のおかげで優勝出来たようなものです。」



「あはは 謙虚なんだね。そういう所も裕太にそっくりだね」



父さんの本名だ。中々知ってる人は少ない。


「もしかして、父を知ってるんですか?」


「君のお父さんとは、中学からの同級生でね。昔はよくゲーセンで段位戦をやってたよ。

1回も勝てなかったけどね笑」



「そうだったんですか。僕も勝てた事ありませんよ。」



「昔から強かったからね。高校卒業してからあいつはプロゲーマーになって海外ばっかだったから全然会えてないけどね。でも君の顔をみてどこかで見た事あると思ったんだよ。」



「あまり似てないとは思いますけど。」




「ははっ 君はお父さんにそっくりだよ

顔も憎いくらい裕太に似てかっこいいよ。」

「まぁ よろしく伝えといてくれ。じゃあまたどこかの大会で会おう」



そう言ってKンヤさんは対戦会の方に向かって行った。父さんの知り合いと会うのは初めてだった。やっぱり昔から強かったんだ父さん。




「なーにニコニコしてるの中山君♡」


西蓮先輩と橘さんが大荷物を持って来た。

どうやら優勝商品のアケコンを貰ったらしい。



「いや、別に… それよりも限定品のアケコンかっこいいですね。」



「でしょー!でもこれはみんなで勝ち取った物だから部室にでも飾りましょ!」


「そうだ!中山君ちょっとこれ持ってて!」


アケコンを僕に渡して西蓮先輩はどこかに走って行った。全く元気な人だよ。



「優勝出来て良かったね。中山君のおかげだよ。」


橘さんは笑顔でそう言った。大会が終わった安堵からか今日はよく笑う。言われてみれば天使という異名は橘さんにぴったりだな。


「いや、僕だったら多分あの兄弟に勝てなかったと思いますし橘さんが一番活躍しましたよ。」



「ううん。中山君が私の為に勝ってくれたからだよ。だから何も怖がらずに対戦できたの。ありがとね」


橘さんと話しているとほんとに顔が熱くなる。なんなんだこれは…




「やっほー!お待たせー!みんなこっちおいで!」


西蓮先輩は何故か解説をしていた白氏さんを連れていた。


「せっかく3人で優勝したんだから記念に写真くらい撮ろうと思って! こいつ暇そうだったし!」



「暇じゃないんだけどな。まぁ君達のおかげで僕も楽しめたよ。さぁ3人とも並んで。」



「じゃあ真ん中は中山君で♡ 」


「えぇ… 普通橘さんですよ…」


「私は…端で…」


「まぁまぁ♡ 今日は中山君が大将だから真ん中なの♡ みくちゃんももっとこっち来て!」



「そ、そんな… 近いよ…」




「ハーレムを見せつけられて煮えそうだからもう写真撮るよ。はいチーズ。」









陽気で元気な西蓮先輩、凛々しくて強い橘さん。そして格ゲー以外興味無い僕。






こんな学校生活も悪くないと思った。





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