第9話 早咲き桜が咲けば(5)

「まあ、綺麗……」


『えっちらほい!』、


『よっ、こら、しょい!』と。


 自身の両足で力強く。


 自転車のペダルを更に回し、回転をさせる。


 私の両目、瞳に映る【早咲き桜】の並木を見て歓喜──。


 思わず声を漏らした私だった。


 だって自転車を素早く走らす私に対して【早咲き桜】の木々達は。


 自身の枝で咲いている。


 それも満開で咲いている【早咲き桜】の花弁を。


 ちょっと早目な春風に乗せ──。


 自転車をスピードに乗せ走らす私の視界を遮るように。


 自分達の桜色した花弁を舞い散らしながら舞い。


 舞い踊り続けるのだよ。


 ちょっと早目な春風に乗せてね。


 その光景が何とも言えないの。


 私山下光流やました ひかるにしてみればね。


 そう、まるであの時?


 桃の並木の満開をする中で。


 桃の花弁と同化して見えるほど美しい少年……。



(お願い)


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