第23話

かぶと虫


休日のとある日、インターホンの音で妻が玄関へむかう。聞こえる声からしてどうやら相手は裏の奥さんらしい。



妻 大変!蜂の巣だって!


キッチンの勝手口から出てすぐ、僅か三歩分ほどの自慢の庭。


そこに蜂の巣が三つ、おまけに蜘蛛の巣。

庭には沢山蜂が飛んでいるらしい……。



妻 行くよ!薬局着いてきて!


夫 薬局ぐらい一人で行けよ!


妻 もう飲んでしまったの!缶酎ハイ……


夫 ……。


たまたま身体の為の休肝日でお酒を呑んでいなかった私は、妻に酷く騒ぎ立てられて薬局へ


バズーカ型蜂の巣ジェット購入、しかも2本も


妻 もう18時半よ、早くして!蜂の巣取るのはあなたの役目。


えー……今?


何でそんなに急ぐんだ。


蜂の巣なんて急に大きくならないのに。


妻に用意されたのは


カッパに不織布マスク、皿洗い用のゴム手袋。


それに……私の老眼鏡。


ゴーグルの代用のつもりだろうか?




妻  早くしてね!



本当にうるさい。


急かされるのは嫌いだけど、覚悟を決める。



梅雨の終わり、この季節のカッパはとても暑い、蒸し暑い……



庭に出て、蜂の巣ジェット噴射。



窓越しに何やら騒いでる妻、


身振り手振りで合図、やたらと指図してくる。



そして全く以って分からない。



夫 本当にうるさいなぁ……


案外簡単に蜂の巣を全て駆除できた!


汗だくで部屋に戻る。


先程の窓越しの般若顔を潜めた妻が突然はじけるような笑顔で私を出迎えて言う。



ありがとう、今日はお礼にアワビよ!



……痛風なのに?



その日の夕食も妻の好物の魚介メインだった。


何がお礼だ、 恐ろしい.....
























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