第22話

かぶと虫


朝、リビングへ降りていくと愛犬が私の顔をじっと見上げている。


愛犬の表情がどこかいじけて見えた。


時計を見て、定位置の夫を見てピンと来た。


妻 おはよ、散歩行ってくれたの?


いつも、のらりくらり。

なのにあまりにも間髪入れずに答えるテンポの良い夫を訝しげに見る。


夫 何故か足が痛くて、歩くのが辛い。


妻 え〜!一体何なの、いつも何もしてないのに



けれど夫の足を見たら、びっくり!


足の親指から足の甲がひどく赤く腫れ上がっている。気になって触れようとすると急に大きな声を出す夫。


夫 やめろ!


その声に夫の側にいた猫が飛び跳ねる。




一体急に何なの?急に怒鳴られて思わずムカつく。心配してるのに……!



妻 病院でも行ったら?


そう言いながら夫の様子をよく見てみると、腫れているのは右足。これじゃあ運転もできない。


仕方なく仕事のスケジュールを調整をして、


愛犬の散歩も終えてから夫を乗せて病院へ


診察後、夫の足の腫れは痛風だと言われた。


お薬を処方してもらって自宅に帰ってきたものの顔を見ているとついつい溢れる小言、



妻 ほら見てみ、毎日毎日飲みすぎなのよ、人に迷惑かかるんだからこれからは控えてね。お酒やめたら?


夫 お酒だけが、原因じゃない。お前も飲むだろ、食生活にも問題あるって先生も言ってたし。



妻 私の作るご飯が駄目だと言うの?何でも人のせいにして……!


また終わりのない言い合いが始まった……


本当に腹が立つ。


二度と、一緒に病院なんて行ってあげない……!


その日の夜はさすがにお酒を飲まない夫、


それから4、5日で足の腫れも引き愛犬の散歩にも行けるようになったようす。


夫はまた性懲りもなくまた、お酒を飲み出している。


凄く心配したのに、馬鹿馬鹿しくなった。



定位置でハイボールを飲む夫が何だか情けなく思えた。




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