髪結い

 やってくれましたよ。それはそれは気合いを入れて。


「きょうは、きのうよりぼりゅーむはひかえめに、それでいてはなやかなしあがりです」


 やり切った顔のエリンちゃん。


「おーすごい」


 イグル様はベッドに腰かけ、エリンちゃんがその後ろに膝立ち。また合わせ鏡の要領で後ろを見せつつ、解説してくれる。


「きほんのかたちはふぃっしゅぼーんですが、わきにほそいみつあみをつくり────」


 エリンちゃんの解説を聞きながら、イグル様は色々な角度から作品を楽しむ。


「ありがとうございます。またやってもらって」


 イグル様達から少し離れた所で椅子に座って、髪結いの二人を眺める。


「こちらこそ。喜んでもらえてるみたいで良かったわ」


 隣で、同じようにリリアンさんも二人を見ている。


「あなた達とすぐ離れちゃって、エリンは寂しかったみたいだから」


 朝食を食べに降りたら、ベンさん達もちょうど食べる所で。

 一緒にご飯を食べ、話も弾み。そのままエリンちゃんに腕を引かれ、フレッドさん達の部屋へ。


「お礼だって……また目的地まであるのに……大丈夫?」


 リリアンさんに声を潜めて訊ねられる。フレッドさんはこれからの予定を話し合うと、ベンさん達の部屋に行っている。


「はい、大丈夫です。気持ちとしてもあれくらいは」


 髪結い中に一旦離脱し、ベンさん達にもお礼が出来た。これで後は出るだけだ。


「ハナ、どう?」

「綺麗ですよ。昨日のとはまた違った繊細さがあって」

「ハナちゃんのかみもやっていいですか!」


 イグル様と一緒に振り返って、エリンちゃんが元気に言う。


「私の? 私は髪短いし……」


 肩くらいまでしかないし、結い応えはないんじゃないか?


「ハナちゃんのかみ、とってもこおぉいけど! あおでしょ! えいゆうさまのおいろ!」


 おお、青って気付いてたのか。ほとんど黒に見える濃さなのに。


「きれい! やりたい! ……だめ?」


 う、そんな顔されると……。


「うーん、それじゃ、やってくれますか?」


 椅子から立ち上がって、エリンちゃんに近付く。


「! ありがとう! きあいいれます!」

「はい、お願いします」



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