起床

 なんとか、通じた。

 ちょっと分かってきた。イグル様はあれだ。見た目の割に精神が無垢っぽいぞ?


「んぅ……」


 それとも精霊様がみんなそうなのかなあ。

 性別だって「たぶん……おとこ?」て。たぶんて。


「……ん……」


 それで、今、イグル様の抱き枕にされてるのはどうしようか。


「んー……」


 昨日説得して、それぞれベッドに入ったんだけどなあ? 精霊様じゃなければぶん殴ってますよ?

 いや、ついさっきまで気付かず寝てた私もどうかとは思うんだけど。


「……」


 空は白み始めてる。もうこれ、時間的にも起こしていいよね?


「イグル様、朝ですよー。起きて下さい、手と足を外して下さいー」

「んん……やだ……」


 なんでよ。


「起きて下さいーほら、外が明るいですよ。気持ちのいい朝です」


 多分。イグル様の腕でちゃんと見えないけど。


「んぅー…………」


 お? 緩んだ。


「ういしょ……んーー!」


 腕から抜け出し、起き上がっての伸び。


「ふぅ。さ、イグル様、顔洗いに行きましょう」


 足もどけてベッドから降りる。で、イグル様は丸まる。


「…………ん」


 起きないかぁ。


「この手は使いたくなったんです……がっ」


 掛布を引っ剥がす!


「うわっ?!」


 勢いで落ちかけたイグル様は、ベッドの端にしがみついた。


「? ……。……?」


 目を丸くするイグル様に、にっこりと。


「おはようございます」

「……お、おはよ…………?」




 顔を洗って、部屋に戻って。


「ハナ、あれはびっくりする」


 イグル様は完全に目が覚めて、何があったかしっかり認識したようで。

 自分のベッドに座り、腕を組んでこっちを見る。


「んー……イグル様、起こし方があれだったのはその通りです」


 私もまた、同じ様に腕組みする。私も何度もやられたから、気持ちは分かります。


「ですが、それ以外での起こしようがなかったのも、またその通りです」

「んむぅ……」


 膨れたくらいじゃ怖くありません。


「というか何で私のベッドに入ってたんです? それこそ驚きました」

「それは……」


 それは?


「……いつのまにか、入ってた」


 はい?


「ぼーっと起きたときに、ハナがいるなって」


 そりゃ隣に寝てますし。


「あーハナだーって、思って……入ってた」


 どういうことだ。


「うん? うん、まあ次からは入らないで下さいね」

「えぇ……」


 悲しそうな顔しないで下さい。ちょっと気持ちが揺らぐ。


「さ、朝ご飯食べに行きましょう! 食べたら出発です!」

「ヴリコードに?」

「はい。その前にベンさん達にも挨拶しましょう」

「……エリンにも?」


 言いながら、イグル様の手が髪の毛を触る。


「エリンちゃんにも。また髪、結ってもらいましょうか」


 寝る前に解いた髪は、寝癖もなくサラサラと揺れる。


「やってくれるかな」

「やってくれますよ」



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