30.告白.TM


さて、今日告白し直すと決めたけど、どのタイミングが良いだろうか、うーん、朝だと気分が乗らない気がするからお昼ご飯後かな、そうしよう。


お昼ご飯が終わり、お互いに片付けなんかが一通り終わって、ソファーに座っている。

頭の中で言うべき事を考え、心の整理をした。

空気を変える為にみやびに向き直り、名前を呼んだ。


「みやび、聞いて欲しい事がある」



MIYABI View


2度、キスを断ってしまった。

2度目は敏夫から止めてくれたけど、あれは私の拒否反応を見たからだろう、敏夫は優しいから、だから私が断ったようなものだ。


敏夫と付き合う事を受け入れた、受け入れてしまえばそれは楽しく充実したものだった。

そしてキス以外の事は恋人同士だからと思えば受け入れる事が出来た。

私は女の子として敏夫の事が好きだ。

だから、キスだって受け入れる事が出来ると思っていた、だけど、心が拒否反応を示していて、それは表情にまで現れていたみたい。


敏夫は私の女の子としての部分を受け入れてくれた、それは嬉しい、だけど私にはそれまでの33年が存在している、そしてそれは公に無かった事にされている。

無かった事になったからと言っても実際には存在していた、今は15才の女の子だからといってそれまでを女の子として過ごしたわけじゃ無い。

それは私の存在が否定されているように感じていて、33年の喪失はどうしたら良いのか、自分では答えが出せない。


敏夫にどうして欲しかったのか、自分でもよく分からなくなっている、それに敏夫はまだ16才の男の子だ、期待するのが間違いというものだ。



「みやび、聞いて欲しい事がある」


またキスだろうか、もしそうなら今度こそ、と思うけどどうだろうか。


「今からもう一度、告白をする、聞いて欲しい」


どう云う事だろうか、もう一度告白された所で何かが変わるとは思えないんだけど。

だけど、うん、敏夫の言う事だ、何か考えがあっての事かも知れない。


「うん、聞かせて」


「4月から居候させてもらって、それから色々とまささんにはお世話になったと思う、当時から毎日ご飯を作ってくれて、毎日面倒見てくれて、早く生活に慣れるように気遣ってくれて凄く嬉しかった。

突然入院して、みやびになって帰ってきてからは、それまで以上に俺達は距離が近くなって、殆ど毎日ずっと近くで過ごして、すぐに俺はみやびの事が好きになった、最初はおじさんなのに本当に好きなのか、とか色々考えた、勘違いじゃないのか、なんて、でも俺の気持ちは変わらなかった、だから夏祭りの時に告白したんだ、今から、あの時に言いそびれた事を言うよ」


「元男だったとか、33才で従兄弟であったとかで俺の気持ちは揺るがない。そしてその過去も否定しない。過去も全部があって今のみやびだと思う、だから俺はみやびのその過去も全てを踏まえた上で、みやびの全てが好きで全てが欲しいと思っている」


「みやび、好きだ、心の底から君を愛している。みやびの全てを肯定して幸せにするのは俺しかいない。

そして、俺が間違えそうになったら、みやびの人生経験で俺を助けて欲しい。

あらためて、俺と付き合ってほしい。」



敏夫に気付かされた、私は私の過去も含めた全てを認めて欲しかったんだ、無かった事にしたくない。

そういう想いが強く残っていて、それを受け入れられないと、その部分が拒否反応として出てしまっていたんだ。


過去も全て認めて欲しいなんて、なんて贅沢な望みなんだろう、でも敏夫はそれを察してそれも含めて肯定してくれる、過去があっての私だと認めてくれるという、こんな幸せな事があるのだろうか、これが私の求めていたものだ。そしてそれは敏夫にしか出来ないだろう事だ。

心は歓喜に溢れ、私の瞳には敏夫以外は何も映らない、もう完全に敏夫の虜になってしまったようだ。彼に一生を捧げても良い。

でも良い、私の過去を含めて全て受け入れてくれる人なんて敏夫しかいないだろう。


「敏夫、嬉しい、私も好き、今度は本当に心から好き、愛してる」


気付いたら敏夫に抱きついていた、驚く敏夫を見上げ、目を閉じてキスを待った。



TOSHIO View


2度目の告白は、みやびの心に通じたようだ。

その証拠にみやびは俺に抱きついて、潤んだ瞳で俺を見上げている、そして目を閉じた。

その瞳、表情、昨日の時とは全く違う、完全に俺を好きになってくれている、と思う。


そしてこれは、キス待ちというやつだろうか、とうとうみやびとキスができるのか、喜びが湧き上がってくるけどもこのまま待たせてはいけない、早くキスしないと。


緊張しながらもみやびと唇を重ねた。

こんな触れるぐらいでいいのだろうか、勝手が分からない。あんまり押し付けてもいけないだろうし。

今みやびとキスをしている、嬉しい、気分がどんどん高揚してくる。


唇を離し、お互いに見つめ合い、俺もみやびを抱き締めた。

みやびは小さく、柔らかく、力を入れると壊れそうに感じるほどだった。


「好きだ、みやび」

「私も好き、敏夫」


そしてもう一度キスをした。



―――駅


俺達は駅を降りた、少し歩くとそこに俺の実家がある。

お盆休み前に実家に帰省する最中だ。


「やっぱり恋人って事を伝えるの?お義父さんやお義母さんが聞いたら絶対私が敏夫を誑かしたって思われるよ」

「大丈夫です、俺がみやびの全てを好きになって、結婚を前提に恋人になってもらったって説得しますから、それに綾姉にはもう伝えてあって、応援してくれるみたいですよ」

「それは頼もしいね、お姉ちゃんに合うのも久しぶりだな」

「結構みやびの家まで距離あるから中々会いに来れないみたいですよ、じゃないと俺が居候する意味も無いですからね」

「最低でも一緒に住む事は了解して貰わないといけないかな、といっても一番ハードル高そうだけど、私も頑張っては見るけどね、色々言われそうだなあ」

「普通に考えたら若い男女が同棲してるわけですからね、2人で頑張って説得しましょう」

「最悪お小遣い抜きくらいにはなるかもよ」

「それくらいならありがたいです、バイトしますよ」

「前途多難だねえ」

「良いですよ、これくらい、みやびと一緒に居られるなら幸せです」

「そうだね、私も敏夫とずっと一緒なら幸せだな」


そうやって、実家への道を2人手を繋いで帰るのだった。


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これにて2人のお話は終わりになります。

みなさま最後までご覧いただきありがとうございました。


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俺の従兄弟のおじさんが義妹になりまして エイジアモン @eijiunknown21

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