13.自分の気持ち.T

―――体育祭の練習


体育祭の練習のほうはやっぱり俺のほうが遅いため、みやびさんに近くで見てもらいながら走っている。

みやびさんに見られているといつも以上の力が出るような気がしてくる。

それで休憩時間にはみやびさんからタオルを受け取って汗拭いて、みたいな事をしてる、まるで恋人同士みたいだよなあって俺は思ってるし、周りも思ってるかも知れない。


宿題なんかはリビングで一緒にやるようになっていて、これも俺の楽しみの一つで、今の所は俺のほうが勉強は出来ているから教える側に回っている。いつ逆になってもいいけど2人で宿題をやって教えたり教えられたりしたい。


―――週末


んで土日なんだけど、いつでもみやびさんと出掛けられるように友達と遊ぶ約束は入れてないし、今日は一日家で過ごす予定。

一応みやびさんに何かしたい事がないか聞いてみるかな。


「みやびさん、今日何か外出予定があったり、したい事とかないですか?」

「うーん、特に無いねえ、昼過ぎに食材の買い物に行くぐらいかなあ」

「俺も今日は一日暇なんで何でも言って下さいね、あ、あと買い物にも付き合いますから」

「うん、分かったよ、それじゃあ買い物に行く時は声を掛けるね」


「あーそうだ、今から家の掃除するから手伝ってくれないかなあ」

「任せて下さい、なんでも手伝いますよ」

「うん、頼もしいね、じゃあまずはリビングとキッチン周りと廊下のホコリ取りと大き目なゴミを拾ってココに捨ててくれるかい、それが終わったら掃除機を掛けるところまで、まずはお願い。

私はお風呂掃除とトイレ掃除してくるからね」

「分かりました、じゃあ早速始めますね」

「うん、よろしくね」


という訳で午前中は掃除に時間を費やした、ちなみに洗濯は俺が朝起きた時には既にみやびさんが回していて、干し終わっているのだった、洗濯物には俺のも入ってて一緒に干されている、気にせず洗って干してくれてるみたい。

みやびさんを見ると長い髪をアップにして纏めてて可愛い、そしてうなじに色気を感じる。


「あ、コレ?長いから掃除する時は邪魔でね、ネットでやり方を調べてみたんだよ」

「その髪型も似合ってますね」

「そ、そうかい?ありがとうね」


みやびさんはちょっと照れてた、それもまた可愛い。

お昼ご飯を一緒に食べ、お昼からも特にやる事はなく2人でネットの動画サービス何かで時間をつぶした。


夕方になり一緒に買い物に。

いつものスーパーに寄って、今晩のおかずは何にしようかと2人で話し合い、買い物をした。


日曜はみやびさんが気を使ってくれたのか、私は出掛けないから出掛けていいよ、と言われたが、特に予定も無いので同じ時間を過ごした、

特に何もなくても一緒の時間を過ごすだけで幸せな気分になれた。


こんな感じで穏やかな日を土曜日曜と過ごしたのだった。


―――週明けの学校


その週明けからクラスメイト、特に一緒にリレーをしている奴らからお前ら付き合ってんの?と言われ始めるが俺は"まだ付き合ってないよ"と返すと、マジかよとっくに付き合ってると思ってた、と言われる。

狙い通りではあるんだけどよく考えたらみやびさんの方に同じ事を聞かれると不味いな、距離を置かれるようになったら嫌だ。


そんな心配をしていたんだけど、結局その週は距離を置かれる事はなく、先週と同様にお昼も練習中もその後も近い距離のまま平穏に終われた。……何となくだけど距離が少し近いような、いやこれは気のせいか。



そして新たな問題というか、ある程度予測されていた出来事が発生した。

それは告白だ、といっても俺じゃなくて、みやびさんに対する、なのだけど。

思っていたより早い気がする、まだ転入してきて2週間も経ってないんだぞ、絶対勝算なんかないだろう。

それに基本的に俺が一緒にいるというのによく告白なんかする気になれたと思う、毎日一緒に通学し、一緒にお昼ご飯を食べ、練習中も殆ど一緒にいて、近くで見学までしている、どこにいきなり告白して成功する要素があるというのか、聞いてみたい所ではあるけど、やけになって一か八かで告白なんかしても意味ないだろうに、もしくはその程度しか好きじゃないって事か。

ああ、なんだか考えていたら腹が立ってきた、でもみやびさんが俺にラブレターがあった事を隠さず教えてくれて、それは嬉しかった、こっそり行って告白を断ったとしても少しのダメージがあったと思う。


「それでね、実はまだこの事は2人にも話してなくて、内緒なんだけどね、コレ、話さないほうがいいよね」


うーん、話しておいた方が良いような気がするけどなあ、一応確認してみるか。


「念のために聞きますけど、断りますよね?」

「当たり前だよ、男からの告白なんて受ける気はないよ、それにそもそも誰かも知らないのに受けると思ってるほうが可笑しいんじゃないかな」


うう、俺の心がダメージを負っている、そうですよね、男からの告白なんて受けないですよね、……落ち着け俺、直接俺が言われてる訳じゃない、落ち着け。


「始めから断るつもりなら2人にも言っておいたほうがいいと思いますけど、安心しますよ」

「そういうもんかい?分かった、2人にも話しておくよ、でも巻き込みたくないから2人は置いてくけど、敏夫君は着いてきてくれるんだろ?」

「ッ! もちろんです!でも始めから一緒だと出てこない可能性もあるので、始めは隠れてますね」

「確かにそうかもね、良く気が付いたね、分かった、でも何かありそうな時はちゃんと助けてよ」


ちょっと嬉しかった、きっと俺を信用しているからなんだ、男だからってのも大きいだろうけど。


みやびさんは友達の2人に話したようで、色々アドバイスなんかを受けたらしい。

そして俺とみやびさんは一緒に放課後に呼び出された場所へ向かい、俺は隠れた。

相手は遅れてやってきやがった、2年生のようだけど、なんというか、ちょっとやんちゃ系かな。

みやびさん1人だから出てきたのかな、分からんけど、そもそも呼び出しておいて遅れてくる時点で論外なんだけど。


相手が自己紹介して、しどろもどろになってさらに緊張からか時間がかかって、やっと告白したみたいで。


「すみません、私、そういうのに興味が無くて、付き合う気はありません」


と断った。

相手は食い下がろうとしたけど、みやびさんは直ぐに踵を返して去って行こうとした、すると、相手がみやびさんの腕を掴んだ。気が付くと俺は飛び出していた。

マジかよと思いながらダッシュして、直ぐにそいつの腕をとった。


「おい、あんた!断ってるだろ!手を離せよ!」

「なんだお前は!お前には関係無いだろ!」


「みやびが断ってるだろ、手を離せよ」

「はぁ!?なんだよお前、彼氏か!?」


くそッ!俺はあんまりこれを言いたくない、俺がそうと意識したくないからだ。


「みやびは俺の妹だ!文句あるか!みやびに近づくな!」

「え?……光野さんの…兄…だって……?」


相手が呆然としたのでみやびさんの肩に手をやり、一緒にその場を去っていった。


はー、緊張したー、流石に追いかけては来なかったみたいで安心する。

相手から見えなくなった所で肩から手を離した、みやびさんが嫌な思いをしているだろうから。

みやびさんを見ると嬉しそうな表情をして俺を見ていた。


「すみませんでした、肩を触っちゃって」

「いいよそんな事!それより、ちゃんと助けてくれてありがとう、腕を掴まれた時は本当に怖かったよ、力で振りほどけ無いし痛いしで、女の子になった事をまた実感しちゃったなあ。」

「なんで嬉しそうに話してるんですか、危なかったんですよ?」

「うん、分かってるよ、でもね、敏夫君が直ぐに助けてくれただろう?それが嬉しくて、本当に嬉しくてね」


そう言いながらみやびさんは少し泣いていて、涙を拭っていた。よっぽど怖かったんだろう、確かに力で抵抗出来なくて痛かったら、そりゃ怖いだろう。


「助けるって事前に打ち合わせしてたじゃないですか、俺はいつでもみやびさんに何かあったら俺が絶対助けますから」

「うん、ありがとうね、やっぱり君は頼れるね」


すっかり涙を拭いて、俺を見上げてまた嬉しそうな表情をしていた、俺はその笑顔に心臓がドキドキしっぱなしになる、あーもう!泣き顔からのギャップでさらに可愛いんだよ!


でも怪我もなく助けられて良かった、あいつ遅れてきたのもみやびさんが1人で来たか確認でもしてたからじゃないか?まあ今はどうでも良いけど、でも顔は覚えた。


―――体育祭2日前


結局先週末も先々週と同様に土日は自宅で過ごしてしまった、外出は買い物だけというインドアっぷり、まあ別に楽しいからいいんだけど、流石に来週は何か考えとかないとな。


さて、明日は智行に俺の気持ちを伝える日だ、だから今日、今から心の整理をする。

この2週間と少し、ずっとみやびさんと一緒にいて、ハッキリ分かった。



俺は間違いなく、みやびさんのことが好きなんだ、穏やかで丁寧で、優しくて、気が利いていて、時々冗談も言ってくれて、認めて誉めてくれて、誉められると嬉しそうにしたり、それに一緒に食事をしている時はとても嬉しいし、幸福を感じている。料理を褒めたりおいしそうに食べていると、みやびさんはとても嬉しそうにしてくれる、俺にはそれがとても大事で手放したくない。

中身がおじさんでも関係ない、33才の元男だろうと、今は15才の女の子なんだ、俺を見るときは従兄弟であったり義兄であったりするかもしれないが、それでも好きになってしまった。この気持ちは、なんと言われようと変わらない。

そして従兄弟や義妹というのは結婚できるのだ、これはとてつもなく大きい、もし出来なかったらスタートラインにすら立てないし絶望していただろう。そう、これが俺の気持ち。


ただ大きな問題があって、みやびさんには男の心があって、やはり男への拒否反応と無理だと思う気持ちがしっかり残っている、それをどうにかしなければ俺の気持ちは伝えられない。


まずは、智行に俺はみやびさんが好きで渡せないと伝えなければいけない、智行には悪いけど。


そしてみやびさんに俺を好きになってもらえるような方法を考えなければいけない。

でもどうしたらいいんだろうか、女心を持って、俺を好きになってもらうには。

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