第13話 その勇者、テロリストに怒る
ミオちゃんたちのいるイベント会場を、上から観察する。
ミオちゃんたち二人の魔力の波動に乱れはない。まだ、無事だ!
会場の周囲には人か何人か脱出したようで、しきりに携帯をかけたり、周囲に助けを求めたりしているが、まだ警察は出動していないようだ。携帯が繋がらないとかキレとるし。
「俺ってこういう繊細な潜入ミッションって苦手なんだよなぁー。てか、人質救出とかって成功したことあった?」
いや、ここは俺にできるやり方で最善の手を尽くそう!
「てなわけで俺氏、1階正面エントランス前・・・なう」
やっぱ、パワーでゴリ押しに限るな。
『誰だおまえは!』
「日本語じゃないと分かんないよ!スピーク ジャパニーズ、OK?」
異世界の共通語は日本語だったとだけ言っておこう。異世界言語能力?知らんなぁ。
「オマエ、ここ、クル。すわれ!」
戦闘服姿の東洋人、多分Cな国かKな国の人。間違ってたらごめん。でも不健康なくらい痩せてるからNKな国のかたかな?
銃口を向けて何かギャーギャー喚いてる。
あっ、俺知ってるよそれ。H&K MP5って銃だろ?
タタタタタタタ
「うわっ!ぶねーな!撃ちやがったよ!」
こんな遅い弾避けるのはわけないが、後ろにパンピーな野次馬の方々がいるので、
のたうち回ってる敵の武装解除するフリして、H&K MP5とその予備弾倉を
MP5って、かっこいいよな!なっ!男の子なら、分かってくれるよな、俺のこの気持ち!
さて、この男どうしたものか?普段なら、俺を殺そうとしたやつなんか生かしてはおかないのだが・・・チラ、やっぱ見てるよ野次馬さんたち。携帯で撮影もしてるし。
「しかたないなぁ」
ボキッ!ボキッ!ボキッ!ボキッ!
『ギャーギャー&#@☆*#$』
両肩と両足の関節を外した。コレで安心。
「おっと」
タタタタタ
『
エントランスに駆けつけてきた敵の、両足の膝下をウインド カッターで切断してさしあげた。会場の壁も大きく切り裂かれて鉄筋が見えてるけど、やったのは誰だ!僕知らないしぃ〜
『『ギャー&#@☆*#$ギャーギャー』』
「うるさいなぁ!
「やっぱ、俺の半分は優しさで出来てるんじゃないのか?」
◇◇◇
『
『何名だ?』
『それが、一名だけです。』
『第3班を向かわせろ!小日本の異能者だろう。第3班には、遅滞戦術を徹底させろ。時間を稼ぐんだ!半島人は肉壁で使い潰して構わんと。』
『
『金!呪殺陣の発動はまだか?』
『・・・少校、あと10分だ。この蠱毒の壺は、我が一族が百年の怨念と呪いを込めたので、数百のおぞましい呪怨を封じ込めた壺だ。
あんたの兵隊が触れたら、それだけで呪われてしまうぞ!
それをあと三つ陣に配置しなければやらないんだ。』
『能書きはいい、あと五分でやれ!』
◇◇◇
「ねえ、ミオちゃん。なんか気味の悪い壺を持った人たちが入ってきたよぉ・・・」
「クルミちゃん、あれは日ノ本にあってはならないものだよ。たぶん、
「
「うん。最悪の場合は、私の命にかえてでも・・・」
「分かった。私も手伝う!」
「クルミちゃん!」
「私だって
「ありがと。クルミん大好き!」
「てへへへぇ〜。私もミオミオのこと大好き!」
「「でも、ユキト先輩が一番好き!」」
「それかぁ!」「ふふふ」
「さあ、行こう!」
二人は震える手で呪符を取り出した。
◇◇◇
イベント会場に進むまで、装備の劣る前衛が10人と明らかに装備の違う後衛が15人で攻めて来たんだけど、戦い方が汚いんだ。
異世界で俺を召喚した聖教国のやり方、つまり、奴隷を肉盾にして、後ろで正規兵がダメージを温存しながら戦う戦術だ。
俺?俺は召喚勇者だったから、当然
まあ、ヤツらが何人いようが
だが、奴隷を使い潰しそうとしていた15人には帝級魔法【ニヴルヘイム】で氷のオブジェになってもらった。
やべぇー、また建物に大きなダメージあたえちまったぜぃ。
ガバーン!
金属製の扉をあけて会場に入ると、大勢の怯えた視線と、雨のように弾丸が飛んできた。
タタタタタタタタタタタタタタ
前方の
この大きなホールには、敵が74名いることを探知魔法で確認し、ロックオンした!
そして、久々本気で魔力を循環させた!
『神級魔法【インドラズ スピア】』
俺の頭上から雷の槍が光速で放たれた。ロックオンされたターゲットに逃れるすべはない!
ダダーン!
武器を所持していたターゲットは、叫ぶまもなく神の雷に撃ち抜かれ倒れた。
バジャーン!
やべっ!的の近くにあった電気機材が、ショートして火花だいしてる・・・
「
「悪しき敵を
「いやー!きゃっ」
「クルミちゃーん!」
クソ!変な壺を運んでいたパーカーを被った男たちは、武器を持ってなかったので後回しにしたのが裏目にでた!
クルミちゃんの呪術が反撃され、敵の呪いを返された!
あの壺まずいぞ!
「オノレ!よくも俺の仲間を傷つけたなああ!」
『神級魔法【次元隔絶結界】』
『神級魔法【プロミネンス バースト】』
6つの壺とそれを守ろうとしていた怪しい男たちをそれぞれ次元結界で囲み、その中で太陽プロミネンスを爆発させてやった!
次元の壁の向こうで、プロミネンスが爆発し、敵と呪いの壺を呪いごと一瞬で消し去った!
「クルミちゃん!」
「クルミの宝具を
「させない!クルミの純潔は俺が守る!」
「ユキト先輩!」
穢れを払うならあれしかない。が、今の俺に扱えるのか?ええい、ままよ!
「来い!『光の聖剣』!」
横たわるクルミちゃんの上に、『光の聖剣』をかざした。
両手で構えていても、聖剣の威力で吹き飛ばされそうだ!
「ユキト先輩!」
聖剣の威力に負けそうな俺に抱きついてきて、ミオちゃんは自分の魔力を俺に流し込んできた。暖かく優しい魔力だ。
「『光の聖剣』よ、その聖なる光で俺の大事な人の穢れを打ち払え!【グローリー ライト】」
ミオちゃんの優しい魔力と共に、俺のありったけの思いを込めた魔力を聖剣に流し込んだ!
広いイベント会場の隅々まで、
「ゆ、ユキト先輩!・・・私もユキト先輩のこと、大好きです・・・」
目覚めたクルミちゃんに、爽やかな笑顔で告白された・・・どうして?
聖剣、お前何をした?
◇◇◇
床に描かれた魔法陣が輝き、そこから上半身に大穴が空き、そのまわりが醜く焼きただれた男が現れた。
その男を氷のような冷たい眼差しで見下ろす青年がいた。
『馬小校。我々組織にこれ程の損害を出させたあなたには、死んだ後でも我々の組織のためにその体は使わせてもらいますよ。』
その様子を黙って見ていた白髪の老人が口を開いた。
「大陸から逃れて3百と余年、以来我らは代を重ね、この国に根ざしておる。最早我らの故郷と呼んでも良い。
それを見も知らぬ男の命令一つですり潰そうとは、
「呂大人のお怒り、この私が晴らして見せます。ですから、どうか心お健やかに。お身体に
老人はゆっくりと頷きながらも、その眼差しは厳しかった。
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