第6話 その勇者、決心する

「本日は突然お邪魔致じゃまいたし、無作法ぶさほうをどうかお許しください。

 申し遅れましたが、わたくし秋津洲あきつしま カイと申します。こちらにひかえておりますのは、弟子の門松かどまつ トウジと申します。

 まずはこちら、東京のお土産になります。お口に合えば宜しいのですが、どうかご笑納しょうのうください。」


 そう言ってカイとトウジはそれぞれも

って来た土産を母さんに渡した。


「あらあらぁ、ご丁寧ていねいにお土産まで頂いて。ユキトとスズネの母で、天霧 オトハでございます。

 まあ!舟和の芋ようかん!まあまあ、私大好物ですのよ、この芋ようかん!」


「こっちは、ペニンシュラ東京のマンゴープリンなのです!トウジのクセにやるな!なのです!」


 ウチの女性陣、初手甘味に陥落かんらく・・・鎧袖一触がいしゅういっしょくとはこの事な。早速土産を開けてテーブルに並べ始めてるよ。


「で、昨日の今日で、どんなご用件で?」


 お茶を飲みながら大男のカイに尋ねた。あっ、美味しいお茶だ。母さん、芋ようかんにつられて高いお茶にしたな。


「昨日話したが、我々は伏魔師ふくまし生業やりわいとしている。

 一般の人には知られていない事だが、昨日現れた様な怪異は【妖魔神霊ようましんれい】と呼ばれて、この現世うつしよに時々現れては人にあだなす事故を起こしているんだ。

 そうした【妖魔神霊ようましんれい】をうのが我々伏魔師ふくましの仕事なんた。」


 母さんが芋ようかんをパクつく手を止めた。一応カイやトウジの前にも、土産の芋ようかんが上品に(少量の意)出されてはいるが、大部分は母さんがパクついていたのだ。

 スズネは現在進行形でマンゴープリン攻略中。


「そしてこの日本には伏魔師ふくましを育成する学校が二つ存在する。

 ここからが本題なのだか・・・」


「俺に伏魔師にならないかと?」


「そうだ。ユキト君なら、きっと優秀な、いや晴明せいめい様や小角おづね様のよう聖級ひじりきゅうの伏魔師になれる。

 だから、どうだろうか・・・」


「断る!俺は人に利用されるのも、人を利用するのも平御免ぴらごめんだ!」


 異世界での事があって、つい強い口調で拒絶した。


「しかし、君ほどの才能は・・・」


バン!


「俺の才能は俺自身の努力で磨き上げたものだ!それを誰かに二度と利用させたりはしないと決めたんだ!」


 異世界で俺の【勇者の力】を欲する人族同士の汚い争いや、醜い権力闘争に巻き込まれ、すりつぶされて使い捨てにされた記憶がフラッシュバックする。


「話は以上だ。遠いところから態々わざわざ済まなかったが、帰ってくれ。」


 カイとトウジはうつむいたままでいる。


「何かユキトが急に大人びて、母さんビックリしたわ。

 秋津洲さん、門松さん。息子の無礼なもの言い、大変失礼致しました。

 そして、伏魔師の学校のお話し、お受け致します。

 どうか息子をよろしくお願い致します。」


 そう言って母さんは深く頭を下げた。


「母さん、どうして・・・」


「ユキト。今まで話した事なかったけれど、お父さんの血筋も、お母さんの血筋も、数代前に伏魔師から分かれた家系なの。」


 母さんは高いお茶を一口飲んでから続けた。


「ユキト。秋津洲さん達は語らなかったけど、この国で私達が安寧あんねいに暮らせているのは、陰でたくさんの伏魔師の方々が体を張ってお務めを果たしているおかげなのよ。」


 母さんは、少し間を置いて続けた。


「いい、ユキト。この国は太古より神に近しい国だったの。

 そのお陰で土地は豊かで水清く、とても恵まれた豊穣ほうじょうな国なのは分かるわね。」


 俺は黙って頷いた。


「だから常々つねずね現世うつしよ常世とこよの境が曖昧あいまいになって現世うつしよ妖魔神霊ようましんれい顕現けんげんして人にわざわいいする事故を起こしたり、大きな霊災れいさい天災てんさいが起こるの。

 でも、日本の有史以前からそれら常人つねびとが太刀打ちできない災害事故から私達を守ってくれていたのは誰だと思う?」


 もはや俺に言葉はなかった。


「お父さんもお母さんも、小さな頃からおじいちゃん、おばあちゃんに言い聞かされてきたわ。

 もし、伏魔師ふくましが頼ってきなら、持つもの全てを投げ捨ててでも御師様おしさま方をお助けしなさいって。

 それが自分の子や孫を守る道なのだぞってね。」


 俺は今日初めて自分のルーツを知った。


 母さんは『お父さんが国境のない医師団で世界を飛び回っているのは、父さんに霊力がなかったからよ』と教えてくれた。

 心の力で人を救う事が出来ないのなら、知恵の力で人を救うと言って医学の道を志したのだとも。今の俺よりずっと幼い頃に・・・


 かっこいいよ父さん。ずいぶん会ってないので、顔を忘れたけどな・・・


「秋津洲さん、今までのご無礼を許してください。

 俺、伏魔師になります。

 俺のを人の為に使うすべを教えて下さい。」


 そう言って深く頭を下げた。


「お兄ちゃんが伏魔師になるなら、スズネも伏魔師になるのです!」


「イヤイヤお嬢ちゃん、伏魔師は危険だから・・・」


 門松さんが慌ててスズネを止めた。


「スズネはまだ身体が成長してないから体術ではおとると思うけど、魔術なら門松さんより強いよ。」


「あらァ、エルフだからもしかしたらとは思っていたけど、スズちゃん魔法使えたのね?素敵だわ〜」


「脳あるエルフは耳を隠すなのです!」


 そう言ってスズネは、火、水、土、風の初級元素魔法エレメンタルマジックの『ボール』をそれぞれ二つずつ自分の周りに浮かべて、クルクルと頭の上で回転させた。


「詠唱も呪符も無しにこれだけ五行呪術を操れるとは・・・この子にも天賦てんぷの才が。」


「ああ、おっしゃる通り、俺、嬢ちゃんに勝てる気がしません。師匠・・・」



 あの後、俺とスズネの決意を確認したカイさんとトウジさんは、大喜びで東京に帰って行った。


 母さんは『お祝いよ〜』って夕食は寿司に連れて行ってくれた。何と回らない寿司だぜぃ!


 基本お任せだったのだが、スズネは穴子を何度もおかわりしてた。まっ、俺も卵焼きを何度もおかわりしてたので一緒かな?

 『変わった子達ねぇ。誰に似たのかしら?』と言いつつ、母さんはサラダ巻を集中攻撃。

 寿司屋にとっては有難ありがたくない客だな・・・


 それから家に戻ってお風呂(もちろんススネに突撃された)を済ませて、やっと今、俺は自室に一人でいる!やっとだ!


 そう、俺様、やっと一人になれたんだ!


 アッチの世界でジジイ師匠のトラウマの修行から解放されて魔族との戦いの前線に立ち始めると、俺は次第に勇者の力を発揮し始めると同時に勇者の名も売れ始めた。


 そうなると手の平を反すように、王族やら貴族やら有象無象が俺の『勇者の』を欲しがって自分の血族の女を俺にあてがってきた・・・いや、違うな。女達に俺をおそわせたんだ!

 勇者の血統欲しさに!


 だが、もう既にその頃には我が戦友はジジイ師匠の特訓のトラウマで、戦場で立つこともあたわなくなっていたのだ・・・(涙)


 だが、群がる女共ときたら俺の『種』を絞る為に嫌がる俺を無視し、時には媚薬、睡眠薬、痺れ薬、麻薬、トリカブト・・・etc、あらゆる薬物を俺に盛って襲いかかってきた。

 それでも戦場に立てない我が戦友に女共は、蔑んだ目で『ちっ、役立たず!』と毒と唾を吐き捨てて出て行ったんだ。


 だがしかし、復活した戦友に恐れるものはない!

 大地割りそそり立つ姿は正義のあかしなんだ!イデのゲージも発動したー!!


『皇国の興廃こうはいこの一戦にあり!』


「あれ?でも、無い!ナイナイナイナイー!オカズが無いー!」


 自家発電の準備万端!お気に入りのオカズでイデオンガンを30年振りに発射しようとするが・・・ベッドに隠してたオカズが―――!!


ガチャ!


「お兄ちゃん。ベッドとクローゼットに隠してたエチエチな本、全部捨てたのです。

 お陰でお兄ちゃんの性癖もバッチ覚えたぜぃ、なのです。

 だから、スズネがも少し大きくなるまで、待っててねダーリンなのですよ〜♡」


 そ、そんなご無体な〜


「それまでは、むだ打ち禁止!なのです。」


 妹にむだ打ち禁止され、イデのケージの光は失われた・・・・・・



*************


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