第1話 その勇者、異世界から帰る

本日の2話目となります。

プロローグをまだお読みでない方は、

そちらからお読みください。

それでは、以下本編


――――――――――――――――――


 30年前の15歳の冬。俺はこの場所でトラックにひかれ、異世界へ転生した。


 そして異世界では、勇者として魔王軍と闘い、壮絶な死闘の末魔王を倒し、裏ボスの邪神と相打ちになって俺は死んだ・・・はず・・・だったんだが、あれ!なんで俺事故現場に戻ってるの?

 しかも事故当時の学ランを着て・・・


 現場は近所の鷹巣たかのす神社前の交差点。


パァ――――――――――


 宅配便のトラックが、信号機に突っ込んで止まっていた。


 うっわ、これ信号機がなかったら、また異世界に転生してたかも。


 いやいやいや、二度と異世界には行かないぞ!ホント。母さんが一人で残されるからな。

 ちなみに親父は健在だぞ。だが海外を飛び回っているので、ほぼ母子家庭。


「パパァ――――!!」

「プッギャ―!」


 小鳥のような可愛らしい声の女の子が、俺の反応出来ない速度とステップでタックルしてきた!

 見事なタックルを決められた俺は神社の鳥居とりいにたたき付けられ、情けない声を出してしまった。


「パパ、パパッ!パパァー!」


 少女が俺の胸に頭をグリグリさせながら、聞き捨てならないセリフをはいた。


 ちょっと待てい!俺がパパだって?


 異世界での30年間。魔王軍の侵攻に対する肉壁捨て駒として前線に立たされ続けた俺は、年齢=彼女いない歴を更新し続たのだが・・・何か?


 それが、やっと故郷の世界に戻ってきたと思ったら、パパだと?

 イジメか!新手のイジメなのかっ!!


 俺に強く抱き付いている女の子は、神に祝福さたとしか言いようのない美少女だった。

 ストレートなプラチナブロンドの腰まで届く長い髪。吸い込まれそうにんだ瞳の色はラピスラズリ。さくらんぼのような愛らしい唇。

 そしてプラチナブロンドの髪から飛び出しているのは、特徴的な・・・


「えっ、エルフ!」


ドクンッ!


 俺に抱き付いている小さな女の子が、異世界でよく見たけど、こっちの世界ではいないはずのだと認識した瞬間、世界が大きく震え、この!!


「えっ?世界の事象じしょうが、たった今改編されたのです!

 えっとつまり〜、今からはパパ改め『♡』なのです!」


 ロリで美少女なエルフが、目をキラキラさせながら言った。


「お兄ちゃんって、俺に妹は・・・いました!」


 なんてこった!記憶に齟齬そごがあるぞ。


「えっと、俺がエルフちゃんに会う前までは、俺は一人っ子だった。

 でも、それと同時に富士見台小学校に通う、6年2組の12歳で、生き物がかりの天霧あまぎり スズネは4年生の時、ウチの養女になった記憶も確かにある。

 二重記憶とは、これ如何いかに?」


「はいなのです!えっと、スズネはスズネは2年前の10歳の春に、養女にもらわれてきた天霧 ユキトの妹なのです!

 うんうん、お兄ちゃんとだいたい認識同じなので、記憶の矛盾は無問題モーマンタイなのでっす!」


 う〜ん、いまだふに落ちない。


「細け〜こたぁーいいんだよ!なのです。それでもやっぱりふに落ちない場合、スズネはもっと思いだしちゃうぞ!です。」


「えっ、何を?」


「えっとぉ、お兄ちゃんはぁ、スズネが養女に来た日から、毎晩スズネと一緒にお風呂にはいってるのです!」


「ぐっ」


「毎晩お風呂で洗いっこでーす!」


「うがっ」


「も一つ行っときますか?てす。」


 これ以上のクリティカルヒットはHPが・・・


「お兄ちゃんはぁ、ベッドのマットレスの下に、バラエティ豊かなを隠していやがる、です!守備範囲が広いのでーす!」


「・・・・・・」


「お兄ちゃんのぉ、最近のお気に入りのオカズはぁ、バブみなのでぇーす!

 ちょつとこの性癖には、スズネもドン引きなのですぅ!」


「ごめんなさい、ごめんなさい、スズネさん、ごめんなさい。私が悪うございました。何でも言う事聞きますので、もうこれで勘弁して下さい!」


 俺は兄としてスズネに美しくも正しい土下座の見本を見せてあげねば・・・


パ――ン!ザザザァァ―――!


 俺とスズネを取り込んで、一瞬で鷹巣たかのす神社の境内けいだいが結界で覆われた。


「お兄ちゃん、この『力』は魔力とは違うのです!どちらかちと言えば、邪神の力の源泉げんせん・・・・・・」


「スズネ!見てっ!」


 俺とスズネの周りの地面が重油やコールタールの様な暗黒の物質におおわれていた。

 それが泡立ちながら俺たち2人から逃げる様に境内けいだいの奥にバラバラに散って行く。


「俺らから逃げてくみたいだな。」


「はいなのです。よく分かりませんが、アレらは人間の悪い気のよどみや、モンスターが出現する前の魔力だまりりに似た感じがするのです。」


「あれは何だ?ネズミやタヌキみたいな動物の化け物もまぎれているぞ!」


 よく見ると暗黒物質の波の中には、体の一部や大半が暗黒物質化した動物モドキもたくさんまぎれ込んでいた。


「8時の方向!敵!なのです!」


 スズネの警告より前に、俺はソレを感知していた。


 俺は常時自分を中心に半径30メートル以内の全ての動きを把握はあくしている。

 異世界で勇者として生き残る為に鍛えた力だ。


 とにかく、俺の左後方10メートルで、どうやらパニックを起こしたソレが、逆方向の俺に向かって飛び掛っ来るのが分かっていた。


 だが、俺が対応するよりも早くスズネが反応した。勇者の俺より早くだと?


元素魔法【風】エレメンタルマジック・ウインド


 それはなじみ有る魔力のうねりを伴って、飛び掛ってきた半分ネズミの化け物を風のやいばで切りさいた!


 切りさかれたネズミの化け物は、すすのように形が崩れて空気に溶けて行った。


「スズネ、どうして魔法を使え・・・ン?」


ゾワッ!


「お兄ちゃん、奥から強い威圧なのです。身の程をわきまえろ、です!」


「ははは、そうだね。どんな奴か見に行こう。」


 スズネには色々問いただしたいが、まずは向けられた敵意に対処しよう。


「付いて来れるね?スズネなら。」


「もちのろんなのです!」


 スズネは意外と古典がお好みであった。オッケー!趣味が合って助かるわ。


 それよりも、スズネが魔法を使えたのなら、多分俺も・・・来い!


黒丸くろまる!』


 俺は右手に魔力を込めながら、親友がきたえ上げし我が愛刀あいとう黒丸くろまる』を召喚しょうかんした。


「ひっ、黒丸っ!」


 スズネは鋭く叫ぶと、おびえるように俺の背中に引っ付いてきた。かすかに震えているのか伝わって来る。

 黒丸にトラウマでも有るのかな?


 黒丸は異世界でオリハルコンより希少な極魔金剛鋼きょくまこんごうこうを、黒曜石こくようせきの様に黒光りするまできたえ上げた日本刀だ。


 むろんアッチには日本刀なんて無かったから、鍛冶師の親友に日本刀とはどんな物かと三日三晩語り続け ― もちろん酒を呑みながらだったがな ― 俺の想いを汲み取ってくれた親友が、正に命をかけて打ってくれた世界で唯一無二の一刀だ。


 軽く反った刃文はもんだけが淡く蒼白く光っていて幻想的で美しい暗黒のかたなだ。


「よう、久しいな黒丸。どうやら俺の元いた世界にも厄介事やっかいごとがあるみたいでな、またお前の力を俺に貸してくれ。」


 黒丸は黙って刀身に魔力のうずもとい、俺に無言の答えを投げかけて来る。 『』と。


 準備は整った。さあ、境内けいだいの真ん中にある強い気を目指そう。俺を挑発した愚か者の姿を見に。



*************


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