『かつて、UFO山と呼ばれた■■山の現在』(●●新聞より)

「え? ■■山のUFOの話? さぁ、知りませんねぇ」

 時を遡ること三十年前、昭和五十年代。この●●区にある■■山では多数の未確認飛行物体UFOが目撃され、世間を騒がせたことを覚えているだろうか。当時は全国的なUFOブームだったということもあり、日本各地でUFOが目撃されていたのだが、その中でも特に■■山はUFOの聖地と呼ばれるほどに多くの目撃例が報告された。しかし、現在では見る影もなく、周辺の住民でさえ、忘れてしまっている。

 一体、いつ頃からUFOは現れなくなってしまったのか。当時、この地区で騒動を体験した住民に聞き込みを行ったところ、●●さん(70)から情報提供を得ることができた。


「そうそう、三十年前はよく見たなぁ。俺も空に変なのが浮かんでるのを見たことがあって、驚いたよ。でも、確かに最近は聞かねえな。いや、十年ぐらい前はまだ結構見るって話は聞いたんだけどよ。急にぱったりとその手の話がなくなったんだよ」


 ●●さんによると、UFOが見られなくなったのはここ十年の話であり、それまでは頻繁に目撃されていたようだ。

「でも……正直、いなくなってよかったと思ってるよ」

 インタビューの途中、●●さんは深刻な表情を浮かべながら、心中を語ってくれた。


「いや、関係ないかもしれねえんだけどな。実はUFOが出るって噂が出てから、何か知らねえんだけど山で人が消えるって噂が広まったんだよ。どこまで本当か分かんねえけど、子どもが行方不明になって、何百人って警察が探したんだけど、結局見つからなかったって事件もあったし。誰かが宇宙人が人攫いしてるんじゃないかって言いだして、正直ここら辺に住んでるやつらはみんな不気味がってた」


 人攫いの宇宙人。実際、その手の報告はキャトルミューティレーションとして、世界的に有名である。宇宙人によって、家畜が血を抜かれ、怪死したという事件が全米で巻き起こり、宇宙人の犯行だという説が広まったのが発端だ。果たして、かつて■■山に出没したUFOは本当に人を攫っていたのか。姿を現さなくなってしまった今、それを確認する術は我々にはない。

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