10個のプレゼント

夕日ゆうや

10個のプレゼント

 俺の彼女・朱里あかりが死んでから三か月。

 元子役の俺は裕治ゆうじと一緒にアイドルユニットを組んでいた。

 ユニット名は《ジェット・龍》。世界を飛び回るアーティストになるようにと願いを込めて。

 朱里との決別から未だに立ち直れてはいないが、みんなが喜んでいるなら――。

 そう思い、アイドルをしている。

 そんな中、島崎アリーナでライブがある。

 一万人規模の大きなライブ会場である。

 顔の良さと裕治の音域がもたらした結果だろう。

 見ていて、朱里。

 俺はそう思い、このライブを乗り越えた。


 休日。

 俺は朱里の部屋を片付けようと思った。

 これ以上、引きずっていては良くない。

 彼女との思い出を消すように、少しずつ片付けを始める。

 じわりとナイフをいれたように心が痛む。

 じわりじわりと朱里の部屋を片付ける。

 ふと押し入れを見やる。

 段ボール箱に、10個の手紙。

 18才の君へ。そう書かれた手紙が、ちょうど10個。

 朱里からの10個のプレゼント。

 彼女の思いが詰まった手紙。

 俺を気遣い、10年で忘れて欲しい。

 そう思ってのことだった。

 立ち直るのに時間がかかることを見透かされていた。

 朱里は最高の彼女だった。

 俺はもう部屋を片付けようとは思えなかった。

 むせび泣き、朱里を思った。

 一緒にいった京都旅行。

 カラオケ。

 婚約。

 すべて覚えている。

 うん。

 俺はまだいける。

 まだアイドルを続けられる。

 愛し、愛されて生きていく――。

 朱里がそうしたように。

 俺がそうしたように。


 これからも生きていくんだ。

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