第4話

 さて、三木高祭みきこうさいである。

 超進学校の文化祭とやらは、秋にやるものらしい。が、三木本みきもと高校は、そこそこの進学校なので、文化祭は六月にある。

 何となく、いつもの三人で、文芸部の展示を見に行く。

 もちろん、原稿は提出したが、それだけである。とっとと、文化祭配布用の部誌だけ貰って帰るつもりであった。

「あいつ、すげえな…」

 級友の秘密を知ってしまった。

 休み時間には、友人とギャグ漫画について、熱く語っていたあいつ。なんと幼少期に、詩人のT川S太郎氏に「この子は凄い」と褒め称えられ、地元にはその詩が記された石碑まであるとのこと。いや、そもそもそういう催し物であったとしても。

「え、あの国語の教科書に載っている人?」

 ミーハーな石矢いしや君は、はしゃいでいる。

「クラスに本物の文豪がいたのか…」

 手元の冊子を見つめる。そんな凄い人と私の駄作が一緒に並んでしまった…。恥ずかしい。ただ、恥ずかしい。胃のあたりが、きゅうとする。

「気にしなさんなって、坂木さかき。三木高の校歌を作詞した人だって、文豪には違いないが、何やら三角関係でもめていたみたいだぜ」

 呉碧くれあおいは、のたまった。

「その話なら、知っている。詩の素晴らしさと、作家の私生活は別物だということさ」

「だったら、坂木君も一緒だね」

 ふわっと微笑む石矢君。

「ん?」

 眉間に、しわを寄せる。

「しかし、強豪校に、凄い子が来るのって、少年漫画だけじゃなくて、現実にあるんだねえ」

「本当にな…」

 呆けていると、石矢君の家族に発見されてしまった。開口一番、「ミレイちゃんをどうするつもりなの?」と、首根っこ捕まれた。それは、誰のことかと返すと、周囲から「坂木、酷い」「坂木君の人でなし」と散々、罵られた。石矢君が、冊子を開いて、拙作を見せつけてくる。

「こんなちょっとアレな性格の美少女と、赤ちゃんだけで旅に出すなんて、人でなしだよ」

 石矢君は、ご立腹である。

「そうね、お目付け役が必要です。もう少し、常識的で、腕っぷしの強そうな子を連れていかないと」

「はあ…」

 何故か、編集会議が始まる。まあ、内容は、まわりが勝手に決めてくれるので、楽ではあった。

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