エロいことしようぜ

@carunyukke

『九ノ瀬はるか』

 突然だが俺は石化フェチだ。

 割とアブノーマルな性癖だとは自分でも思うが、こればっかりはどうしようもないのである。

 あの女性が固まったときの絶望感や質感に、ポーズに、表情に、何もされても抵抗できない、いやそれどころか抵抗の意思すら持てない状況に俺はひどく興奮して惹かれる。破壊等のもう戻せない圧倒的絶望感も相当乙なものだ。たまらない。

 グロやふたなり、人格排泄等もいけたので自分の性癖のストライクゾーンは広い方だと感じるが、最終的に石化……厳密に言えば人の形を保ったまま別のものになる状態変化が一番興奮する。最近は服屋に飾られてるマネキンやトルソーにもいやらしい妄想がはたらき始めているので俺は本当にやばいと思う。うん。

 何でこうなったっていうとまぁ思春期真っ只中の時に石化のR-18を見てしまってそれが刺さったからだが……一旦それは置いといて。


 この話は……まぁあれだ。そんな石化フェチの俺―土井岩助が女の子とエロいことしようぜって話だ。





 春。出会いの季節だ。空は青く、鳥はピーピーさえずっている。気温もちょうどよくて心地良い季節だ。でも俺は秋の方が好きなんだよなー。ほらキノコとか美味しいじゃん。

 俺はしめじが好きだけど君は何のキノコが好き?えーと……ああ、『九ノ瀬はるか』ちゃん?


 「んーーーーー!!! ん! んんーーーー!!!!!!!」


 ははは、何言ってるか全然分かんないや。まぁ猿ぐつわさせてるから当たり前だけど。猿ぐつわ越しでも意外とうるさいものなんだな。

 それじゃあ雑談はこれくらいにして、何もわかってないだろうはるかちゃんに自己紹介でもしようかな。俺の名前は土井岩助。ここらへん一帯の市町村を牛耳っている大地主、土井の三男で今日から高校デビューの16歳。君と同い年だな。仲良くしようぜ? なぁ?

 仲良くするためにはやっぱり会話が必要だよな! 会話は大事だ、会話なくして人との関係性を築くことなんてできやしないからな。よし猿ぐつわを外してあげよう。会話しようぜー♪


 「何なのよ!? ここどこなのよ!!?? 早く家に帰せ!! このクソ異常者!!!」


 わぁとても元気だ。そして会話はできなそうだな。残念残念。俺はもっと世間話がしたかったのになー。ほら、どの球団が好きー? とか最近流行りのゲームプレイしたー? とかそういうほんわかした


 「できるかクソ野郎が!!! 死ね!!!!」


 ……それはよくない。その言葉は冗談でも人に向かって言うものじゃ


 「死ね!!!! 自分が何してるか考えてから言えよクソが!!! 死




 殴った。みぞおちを。何度も。はるかちゃんが喋らなくなるまで。何度も。何か喋ろうとしたら殴った。両手を壁に取り付けられた手錠に拘束されたまま、碌な抵抗ができなかったはるかちゃんを。何度も、殴った。




 君が悪いんだよはるかちゃん。死ねなんて言葉は冗談でも言ってはいけない。分かった? あの世でも来世でも覚えておくといいよ。

 ……ああ、そういえばはるかちゃんの質問に答えてなかったね。ここは土井家の離れの地下だよ。もとは座敷牢だったところを改装したんだ。綺麗なもんでしょ? 美術館っぽくしてみたんだよ。

 そして何で君を攫ったかっていうとねー。んー特に理由はないかな。強いて理由を挙げるなら入学式の帰り道がたまたま同じだった……くらいしかないかなー。



 もういいかな。引き延ばすのもここら辺にしよう。



 俺にはね、不思議な力があるんだよ。大体去年の今頃かな。俺が触ったものが石になったんだ。びっくりしたよ本当に。宿題をしようと握ったシャーペンが少しずつ石化していく様はとても恐ろしかった。でもねでもねでもね!

 それと同時にとても……とっっっっても興奮した! 突然だよ!? そんな魔法みたいな力が! こんなただの一人の人間に宿ったんだよ!? 興奮しない方がおかしいよ!

 しかも幸いなことにこの力、完璧に俺が制御できるみたいでさ! 石化も解除も俺の思うがまま、途中で止めることもできる! なんて使い勝手がいいんだ最高だ!

 ……今のくだりで何となく察することができたかな? お、いいねその顔最高だ。その怯えた顔がもっと歪むところを俺はすごくみたい。あ、当たり前だけど万が一にも助けはこないからね。好きなだけ叫んだり命乞いしていいよ。良かったね、はるかちゃん。



 俺ははるかちゃんの両足を押さえつけるように触った。真新しい制服、靴、やわらかくて温かい女の子の身体、怯え切った目、その他諸々。今からはるかちゃんの全てが冷たくて硬いただの石に変わっていって、輝かしい未来に溢れるはずだった命を散らしていく……

そう思うと俺は酷く興奮してきて、下半身に熱が宿ってくる。






そういえば俺まだ童貞だったな






 ねえ、はるかちゃん。今どんな気持ち? はるかちゃんの両手両足、もう石になっちゃったね。自分の意思じゃもう動かせない、ピクリとも動かない。ねえ教えてよ。自分が石化するってどんな感覚? 冷たくなっていくの? それとも感覚がなくなっていくの?


 「…………」


 ……答えてくれないんだね。ちょっと前まで俺に暴言を吐けるくらい元気だったのに。少しずつ、少しずつ、柔肌が固まっていく感覚をはるかちゃんに教えてもらいたかったのに。


 「…………い……」


 ん? 何か言った? あ、そろそろ石化が心臓付近に到達するね。


「…………ごめんなさい……助けて……」


 これってしっかり中まで石化するんだけどさー血液とかどうなってるんだろうねー。四肢を最初に石化させたけど循環機能まだ働いてるの謎だよなぁ。あ、心臓も石化したね。


 「………………」


 すごい顔だ。脳に血液が届かないとこんな顔になるのか。初めて見た。…………もう聞こえてないと思うけど、


 おやすみなさい、九ノ瀬はるかちゃん。






 楽しい時間は一瞬だ。どんな人物でもこの事実は変わらないだろう。その後にやってくるのは少しだけ後悔が混ざった虚しい感情。……俗に言う賢者タイムだ。

 俺の前には九ノ瀬はるかちゃんの石像がある。制服ごと石化した上半身とはだけた下半身のコントラスト。その顔は苦悶の表情で固まっていて見たものの嗜虐心を刺激する。手錠に繋がれたまま石化した両手、大胆に広げられた両足。

 さっきまで確実に生きていたのに、今はもう命の鼓動を感じられない灰色の身体。間違いなく、間違いなく石化している。

 ……もう元には戻らない、戻す気もない。だからはるかちゃんは、はるかちゃんに今意識があるかは分からないけど、俺の寿命以上の時を、はるかちゃんはこれからも存在していくんだ。少しも動けず、ただ佇むだけの石像として。




 いい……とてもいい……これがいい……石化の醍醐味だ……!




 この郷愁さがいいんだ…! そして下手にどこかに移動するよりはるかちゃんはここにいた方が圧倒的にいいな……! いかにもな犠牲者感が俺の性癖に刺さってる……!


 幸い他にも部屋はある。次はそこにしようそうしよう。


 ああ……はるかちゃん。俺はもういくよ。次いつ来るかは分からないけど、さようなら、さようなら、さようなら……


















朝。予鈴がなって教室内の浮ついた空気が少しずつ静まっていく。やがて担任の先生が入ってきて、クラスみんなの自己紹介が始まっていく。


少し退屈に思って何気なく隣の席を見てみたら、隣の席の女の子と目が合った。少し微笑んで会釈すると同じように返してくれた。どことなく小動物を思わせるその女の子の微笑みが俺の心に突き刺さる。



ああ……やっぱ俺は変態で外道だな。この子と俺は……




エロいことをしたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エロいことしようぜ @carunyukke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ