ep27 弾と風船

 目の前に『1人ダウン!』と幻影ホログラムのような電子表示が出てくる。 これも能力だろうか。

 まだまだ他の階や場所はから爆発音が聞こえてくる。

 俺は咲夜が心配だった。

 あいつは精神に干渉できるが、戦闘についてはからきしだ。 実夕の能力も分からないため少し心配だが、きっと雪和が何とかしてくれるだろう。







 ――――その頃、


「ひいいいああああ!!!! 」


 一つ一つの風船を『入学おめでとう!!』の造花に着いていた安全ピンで割っていく。 目の前の人は悪夢に苦しんでいる所だ。 これで5人目だ。

 相手の身体を傷つけるのはダメだとのことだが、要は体を傷つけなければいいのだろう。 


「こんなの反則だ!! ちっくしょう!!!! 」


 目の前に尻もちを着いていた男がヒュンッと音を立てて消える。 転送系テレポートだろう。


「反則と言われても、私にはこれしかできないのよ 」


 既に消えた男に答える。 さて、次の人を探さなければ。 周りに思念が飛んでいる様子は無い。 次の場所へ…… そう思った瞬間だった。 右手の風船がぱんっと言う音を立てて割れる。 割れる瞬間冷たい何かがかかった気がする。


「狙撃? どこから……? 」


 この能力、どこか見覚えのあるような…… とりあえず机のそばに身を隠す。 割れた風船のところを見ると凍ったかのような白い霜がかかっていた。

 私の中の既視感から確信へと変わった。 雪和だ。


「っ! なんのつもりよ……! 」


 仲間だと思っていたのに、和解したつもりになっていた。 下唇を噛み締める。 私は索敵範囲の幅を広げる、ふたつの思念が近づいてくる。 こんな時にもっとは私の能力が大きければと悔しくなる。 私の能力じゃ誰かが何かを思ってることしか分からない。


 ダダダダッ


 銃声と思しき音が後ろから近づいてくる。 雪和か?


「キャハハハハ! 逃げてばっかじゃ当たらないよ? 」


 シュンッと何かが飛んでくる。 その何かは私を狙った訳では無く当てずっぽうに乱射しているようだ。


「2対1なんて卑怯ですよ!! 」


 雪和の声が聞こえる。 ちらりとの影から2人の姿を見る。 1人はピンクのツインテールの女、もう1人は拳銃1本で抗戦している雪和だった。 風船は残り2個となっていた。 奥からきらりと光り、また何かがものすごい勢いで飛んでくる。


「2対1がダメなんて言われてないよ? キャハハ! 」


 ツインテールの女は連射ができるタイプの十を持っていた。 しかし、上手く操れないのか変な方向に飛んで風船には当たっていない。 また奥からヒュンッと音がして何かが雪和の風船に当たる。 その瞬間風船がパンっと割れる。 風船は残り1個となった。


 「キャハハ! もうおしまいだねぇ!」


 女が風船に向けて銃を構える。 私はその瞬間に女に向かって能力を発動した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君とこの世界で。 朝ドラ猫 @ikemazarasi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ