悪夢

 自室のベッドで眠りにつき、数時間が経った頃だろうか。


「関係者の方ですよね」


 女性の低い声で目が覚めた。意識はあるにも関わらず、身体は動かない。返事をしようにも声が出ない。

 目の前が真っ暗なのは、まぶたを閉じているからだ。

 そこに見てはいけないものがあるような気がして、目を開くことができない。


「ガンゲイジャノガダデズヨネ」


 再度確認するかのように繰り返されたその言葉。その声は一度目と異なりノイズがかっていて、不気味に音割れしていた。


「だッテ、あそこに入レるのは、関係者の方だケですかラ」


 三度目。声は不規則に変質し、更に不気味さが増した。


 僕の身体はいくら動かそうとしても、びくともしない。自由がきくのならば、今すぐにでも跳び起きて、全速力で逃げ出したい。


 緊張で心臓が高鳴る。相手に聞こえてしまいそうな焦燥感から、鼓動のテンポが更に上がる。


 まぶたを閉じていれば、聞こえていないふりをすれば、この人はいなくなってくれるだろうか。願わくばそうあって欲しい。




 それからしばらく、何も聞こえなくなった。


 身体についても自由がきくようになったようだ。安心して目を開けると――


 傍らには見知らぬ女性が立っていた。


「あっ」


 思わず声が漏れたが、女性の手がすぐに僕の口元を抑える。

 体を起こそうとするも、馬乗りになられて移動できない。見た目からは想像できない程の重量だ。


 僕はまるで捕獲されたばかりの野生動物のようにもがいた。


「やっぱり、関係者の方なんですね」


 女性は言うと、口を蛇の捕食時のように大きく開き、僕の身体は飲み込まれていった。

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