第19話 急転直下
「いやぁ助かりました! ここ最近はマッシュボアのキノコしか食べてなくて!」
「お恥ずかしい姿をお見せしました」
「オレ はずかしい」
空になった器を前に恥ずかしそうに笑う3人の青年。
満腹になって人間性を思い出したのか、出会った時のような危機迫る顔ではなく人の良さそうな笑みを浮かべている。
そして、なにかに気付いたように立ち上がり。
「申し遅れました! 俺はグレイス! チーム『
人族のグレイスが前に出て大きく頭を下げた、それを見て他のメンバーも続く。
「私の名はアルセーク、『冒険王』と『剣聖』どのに会えて光栄です」
申し訳なさで犬族特有の大きな耳を垂らすアルセーク。
ミリシアさん、アルセークの揺れ動く尻尾は見て見ぬフリしてあげて。
「オレ ゴレス」
ゴーレム族のゴレスが、表情を全く変えずに腰が折れるのでは無いかと不安になるほど頭を勢いよく下げる。
「頭をあげてください、とにかく無事で良かったです」
ミリシアが聖母のような笑みを浮かべて3人の無事を喜んだ。
俺も安心したけれど、どうしても気になることがあった
そういえば、キミたちの装備はどうしたんだい?。
ダンジョン内で何かが起きたのだろう、と言うのは分かるけれど全く想像が出来ない。
露出が高すぎる格好を見ても擦り傷はあるが大きな怪我は無いし......。
「無くしました!」
無くしたのかぁ。
......隣の2人を見ると恥ずかしそうに顔を逸らされてしまった。
「セーフルームの近くにモンスターの居ない水辺がありまして! そこで皆んなで体を洗ってたんです!」
あぁそこでダンジョンの構造変化に巻き込まれたのか。
それはなんとも運が悪い。
今頃はどこかの木の上にぶら下がってるのかもね。
「ははは! でも運が良かったですよ! コレでモンスターが強かったら死んでました!」
「はい、どうにか私の『硬化』のギフトとゴレスの拳で抵抗出来ました」
「アイツ よわい」
確かに銀級なれる腕があれば、あのモンスター達なら敵では無いだろうな。
その後はダンジョンの構造や気になった所を聞いては見たけれど、特に目新しい内容は出てこなかった。
本当にこのダンジョンはなんなんだ?。いくらなんでも可笑しすぎる......。
ダンジョンに関しての疑惑は尽きないが、今は後回しだ。
「レオス、今回はとりあえず引き上げましょう」
そうだな、ロイドくん達を早く安心させてあげたい。
ミリシアと共に引き上げる為の準備を始めた瞬間だった。
『そこの人達を連れてっちゃうの? 見てて楽しかったのに』
祝福の鐘が鳴り響いた。
/////////
「ミリシア! 彼らを連れて逃げろ!」
レオスが謎の声に即座に反応してアタシ達へ指示を飛ばす......けれどアタシ達の足が石化したように動いてくれない。
あの
『ありゃ? ゴメンゴメン! 怖がらせちゃったかな?』
無邪気に謝る謎の声、形こそ謝っては居るがその奥にある嘲笑が透けて見える。
『うーん、どうしよっかなぁ。このまま見逃しても良いし......でもなぁ暇つぶしの玩具が居なくなるとまた暇になるしなぁ。そうだ! 英雄の器と遊んでみよう!』
今度は空気が質量を持った。
『じゃんじゃじゃーん!
何も無い空間からナニカが生まれた。
人の形をしていることだけは分かる......分かるけれどまるで空間が切り取られたように白い影がそこにはあった。
『じゃあ遊ぼうよ! 英雄の器!』
それと同時。
頭の上から何かに押しつぶされるように重圧がかかる。
立っていられない......グレイスさん達も這いつくばり必死に重圧に耐えてはいるけれど、限界が来るのは時間の問題だ。
どうしよう......レオス。
「来い!」
彼が叫んだ瞬間に全ての圧が消え去った。
アタシ達が必死に呼吸をして息を整えて立ち上がるとそこには。
『へぇそれが噂の聖剣? 魔剣の間違いじゃ無いのかな?』
禍々しい魔素を溢れ出させた背丈ほどの大剣を構えたレオスの姿だった。
「コイツが魔剣かどうかはすぐに分かるさ......起きろ『ナナシ』」
昏き光がレオスの声と共に眩い光へと変わる。
今ここに聖剣が顕現した。
『へぇ! 魔剣を屈服させたんだ!』
「アンタが誰かは知らんが......邪魔をするなら斬り伏せるだけだ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます