第3話 ダンジョン講習会
ダンジョン。
それは人々へ厄災を齎らす未知なる世界。
しかし同時に人々へ未知なる繁栄を齎らす資源の宝庫でもある。
「王都で使われている街灯の魔光具とか色んなところで使われてますよね!」
そうだね、よく勉強してるねロディ。
ダンジョンは世界が産んだ新たな資源だという人も居れば、世界が人を仇なすために産み出した脅威と認識する人が居る。
「レオスさんはどう思いますか? ボクはまだダンジョンに入った事が無いのでイメージが湧かなくて......」
首を傾げて申し訳なさそうに聞いてくるロディ。
それに俺は少し考えてから。
どっちも正解じゃ無いか?。
確かに脅威ではあるけれど得られる恩恵も大きい。
その恩恵を最大限に、脅威を最小限にするのが俺達の役割のひとつだと思ってる。
まぁ、ありきたりな答えだが、そこまで外れてもいないだろうさ。
「なるほど! ......それにしても」
ロディが手に持った教科書をおいて首を傾げた。
「レオスさん、授業が凄く手慣れてますよね?」
そりゃそうだ。
昔に金がない時は家庭教師とかギルドの臨時講師として働いてた時もあったからな。
それに今でも獅子宮殿内でも教えたりする事はあるから慣れてるのさ。
「今でも?」
あぁ、ダンジョンは生き物みたいなものでさ、不定期で新しい法則が生まれたりする。
突然変異の魔物とか、新しいギミックとかね。
そう言うのは一応、全国のギルドで共有されてはいるんだ。
活用されてないけど。
「言われると前のパーティーはそういう事してなったかも......」
別にやらない事は悪い事じゃ無いよ。
最終的に信じられるのは自分の力と経験だけだし......でもね、知っていれば対処出来る事も多いのも事実なんだ。
ここでクイズ! 泣き声を聞くとランダムな状態異常を引き起こされるマンドラゴラ。
耳を塞ぐ。サイレスの魔法をかける。即死させる以外に対処法があります!。
なんでしょうか?。
「えっえ? えーと......もう一度埋めるとか?」
おぉ、それも効果ありそうだね。
だけど正解はペパの実の粉末をかけるだよ。
「ペパの実ってあの赤くて辛い奴だよね? そんなの振りかけたら余計騒ぎそうだけど......」
俺も最初は半信半疑だったけど、実際に大人しくなったよ。
いやぁあの時は焦ったよ。
あのバカが急に抜きやがって......ってごめんごめん! 話がそれたね。
野営の料理のために持って来てたのが幸いしたんだ。
「へぇ不思議ですね! どうしてペパの実をかけようと思ったんだろう?」
確かにな、持ってる事自体は料理で使えるから重宝するし、分かるけど咄嗟には出ないよなぁ。
おっと少し話が脱線したな。
とまぁこんな風に知っていれば対処出来る場面ってのも意外に多いんだよ。
でも、情報を鵜呑みにし過ぎるのも危険だから注意だね。
「なっなるほど! 頑張ります!」
それにしてもロディは飲み込みが早くて教えていて楽しいね。
話は真面目に聞いてくれるし、聞いた質問には答えてくれる良い生徒だよ。
「いっいえ、そんなレオスさんの教え方が良いだけでボクなんて......」
ふむ......。
「(この自信のなさは今までの積み重ねかな、こんな事ならミリシアに早く紹介して貰うんだったな)」
どうにか自信を持たせたいが、今すぐは難しいと考えて一旦保留しておく事にした。
とりあえず座学はこんな所にして王都の近くのダンジョンに潜ろうか。
「えっ! いきなりですか?」
そう、ダンジョンと言っても弱いモンスターしか出て来ない場所だから安心して。
念の為に帰還の魔工具も持ってくしポーションも準備してく。
それに今回は後ろで見ててくれれば良いよ。
「でっでも見てるだけなんて」
今回の目的はロディのダンジョンに慣れてもらう事と、キミのギフトの限界値を知る事。
どのぐらいの重さまで運べるのか。
何処までを『荷物』として反応するのか。
それを知りたい。
「反応ですか? 荷物は荷物だと思いますけど......」
まぁそこもダンジョン内で説明するよ。
「はい! 分かりました」
うん。良い返事だ。
今はお昼前だからここら辺で休憩しようか。
お昼食べて、時を知らせる鐘が2回なったら正門へ集まろう。
俺の言葉にロディは深々と頭を下げた。
これじゃあ一緒に食事しても緊張させるだけだな。
俺はロディと別れ、食事をする為に獅子宮殿を後にした。
/////////
「ロディもレオスの授業を受けたんだ。凄く分かりやすいわよね」
お昼は獅子宮殿の中庭で鍛錬していたミリシアちゃんと合流して、一緒にお気に入りのサンドイッチ屋さんで食べていた。
さっきまでの濃厚な授業内容を思い出して思わず興奮してしまう。
「アタシも最初は驚いたわ、他のパーティではそんな事して無かったし」
マンドラゴラの話は楽しかったな。
「ペパの実でしょ! アタシも最初は半信半疑だったけど、レオスが実際にやってたから驚いたわよ!」
あっ本当にやってたんだ。
「あの時は酔っ払ったマオさんが叫ぶマンドラゴラを笑いながら持って来てね......あの時は肝が冷えたわ」
酔って持ってくるってどんな状況なんだろ?。
マオさんってあの人だよね。
何時も大声で話してるドワーフの人。
ガハハと豪快に笑ってる印象が強い人だった、ボクに話しかけてくれた時も口下手なボクを気遣って色んな話をしてくれた。
「多分、あの人はそんな高尚な考えないと思うけど......まぁ良いわ」
そう言いながら、ミリシアちゃんはお肉がたくさん挟んであるサンドイッチを頬張る。
リスみたいで可愛いなぁ、ボクもやったら可愛いって思われるかな?。
「そうだ。後でダンジョンに行くんでしょ? レオスの動きは見逃しちゃダメよ」
それは勿論だけど......どうして?。
「強くなればなるほど、レオスの動きほど参考になる動きがないの」
だから。
ミリシアちゃんが強い眼差しでボクを見る。
「アタシ達は幸運なのよ、あの『冒険王』を身近で見れるんだから」
気さくな人柄と面倒見の良さで忘れそうになるけれど、あの人は王都最高の冒険者なんだ。
それを改めて再認識した。
この後、行くであろうダンジョンへの気合いを入れ直してサンドイッチを頬張る。
「ぷっ! ちょっとロディ、リスみたいよ!」
むぅ、ミリシアちゃんにだけは言われたく無いよ!。
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