まだ見ぬ君へ

ゆーすでん

まだ見ぬ君へ

「十年後も、変わらず、一人」

 ベッドに寝ころびながらSNSに上がっていた生年月日順に言葉を

 繋げていく占いを見ていたら、見ないようにしていた将来の不安を

 ズバリ言い当てられて、思わず手から滑り落ちたスマホを

 必死に避けた。

 顔のすぐ横でボフンと跳ね上がるスマホが、

「当たりでしょ?」と冷やかしているように感じる。

 もうすぐ深夜零時という時間に、一人で絶望を感じてしまった。


 結婚はしたことがある、勢いに任せてしたのはいいが長くは続かなかった。

 最初こそ浮かれて何もかもが新鮮に感じたが、時が流れれば現実が見えてくる。

 恋愛ならば、相手のせいにもできるかもしれないが結婚となれば話は別だ。

 赤の他人が家族となっていくには、お互いの思いやりと忍耐が必要だから。

 嫌われることを極端に嫌った私は、不安も不満も全部ため込んで、

 そうして一気に吐き出した。

 塵も積もればなんとやら。

 二人とも、見た目は円満な離婚を選んだ。

 そうして十年、恋人になりそうな人もいた。好きになりかけた人もいた。

 けれど、今、私は一人だ。

 一人が嫌なら行動しなきゃというのはごもっともだが、

 一人が気楽なのもまた事実。

 会社一の美人と冴えないおっさんが、二人して転居届を出して来たら

 同じ住所で目玉が飛び出そうになっただとか。

 二人が澄まして仕事をしているのを眺めながら、凄い人たちがいるもんだと

 独り言ちる。

 そんな力技を決める体力も、精神力も私にはない。

 方や結婚して子供がいるパートの後輩は、子供が熱を出せば旦那が

 休んでくれる環境に居て それで生活できるのかと余計なお世話を

 口にしてしまいそうになる。

 世の中には色んな形がある。

 わかっているけど、私には何もない。

 何となく色々出来ちゃうせいで、誰も私を心配しない。

 それでもせめて、誰かにだけは私のことを見つけてほしい。

 ささやかな願いを込めて、誰も読まない恋文を書いてみる。


 まだ、出会っていない君へ。

 ねぇ、君は今どこにいるの?

 目印を出してみてよ。

 私からも、目印出てない?

 目を凝らして、よく見て。

 口が悪いし天邪鬼だから、確かにかわいく見えないだろうけど

 一緒に居たいよ。

 強そうに見えるかもしれないけれど、ほんとは怖くて仕方がないんだ。

 だから、君が私を抱きしめて頭を撫でて。

 今日もここで、一人で立っているから。

 だからお願い。隣で、手をつないで。

 泣きそうな私に、笑いかけて。


 一人がいいわけじゃない。

 一人に慣れた訳でもない。

 心の内に恋文を隠して、今日も明日も君を待っている。

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