第33話 強敵! ゴーマ三姉妹の長女

 イーデンちゃんの使い魔、ケット・シーのトシオを追いかけたら、このダンジョンのボスまでたどり着いてしまった。


 男装の麗人にしてゴーマ三姉妹の長女、ケフェスである。

 髪をポニーテール―でまとめて、手には軍刀を携えていた。

 鉄仮面を被っており、ケフェスの素顔はわからない。実は私も、正体を知らないんだよね。

 ボクっ娘なだけあって、服装もボーイッシュだ。ピンクのゴス衣装ながら、ショートパンツではなく半ズボンってあたりが少年っぽい。


 気になるのは、左右に浮遊している般若の面だ。盾のように大きい。あれはもしかすると。


「覚悟なさい!」


 細い足からは想像もできないほどのスピードで、ケフェスがマージョリーたんに襲いかかる。


 カタナから黒い雷撃のエフェクトが発生し、私をも斬ろうとしてきた。あれが本来の、刀身なのだろう。


 さすがにメキラのような【貫通】攻撃はしてこない。私が受け止めても、ちゃんと防げている。


 しかし、カタナでの連続攻撃を受けて、こちらは反撃できない。


「ダテさん!」


『心配ない! このまま受け止め続けて! アマネ姫を守って!』


 こちらには、まだダメージ要員がいる。


『イーデンちゃん!』


「はい! 【小型魔導砲ショート・マギ・ランチャー、発射!】


 イーデンちゃんの所持する魔神の盾『ゼットさん』が、細い砲身へと変形した。青い光芒を放つ。


「ぬん!」


 般若の面の一つが、光芒を防いだ。やはり、あれは障壁生成装置か。


「援護します。【炎の壁ファイアーウォール】で」


 アマネ姫が指示を出し、テンラが炎を吐き出す。火炎は障壁となって、マージョリーたんとケフェスを分断する。


 テンラがファイアーボールを吐いて、ケフェスをけん制した。


 障壁で防ぎつつ、ケフェスも攻撃の手を緩めない。


 一旦、作戦を立て直しだ。


 さすがというべきか、ヴィル王女は狙撃の姿勢に入っている。自分の役割を、理解しているんだ。


「わたくしが、ケフェスを引き付けます」


 イーデンさんの後ろに隠れてもらい、アマネ姫には援護、ヴィル王女には狙撃を頼む。


「OK」


「承知しました」


 一人でも、問題はない。


『そっちが盾持ちなら、こっちだって! ぬおおお!』


 マージョリーたんの背中に、二つの盾を複製した。盾はモニターアームのような隠し腕で支える。


『秘技、【隠し盾】!』


 スキル【コピー】の応用だ。技や魔法などをコピーするスキルだが、アイテム自体を複製してみた。本当は「対多数」を想定したスキルだったんだけど、ここまでスキがなければ使わざるを得ない。


「こざかしいですよ!」


『だけど、効果的だ!』


 早すぎて防げないなら、全体を防げばいいのだ。

 私が防御や回避に専念すれば、マージョリーたんが戦える。


「【魔導剣マギブレード】!」


 私は、近接戦闘武器へと変形した。


「ぐっ!?」


 優勢だったケフェスの顔が、歪む。般若面のシールドで防いでいるが、押し返されていた。


「やりますねえ。これほどだなんて」


「ケフェス殿、お覚悟を!」


 マージョリーたんの剣が、ケフェスのカタナと火花を散らす。


 魔力でできた刀身は、剣のように固定されない。マージョリーたんが振り下ろすたび、ムチのようにクネクネと波打つ。【魔導砲】の魔力を刀身に変えているためだろう。


 ケフェスの攻撃に、マージョリーたんの剣さばきは負けていない。


「そこ!」


 ヴィル王女が、【ケラウノス・ランチャー】の引き金を引く。


 狙撃により、般若面にヒビが入る。


「あがう!?」


 障壁効果が切れて、ケフェスにダメージが通るように。


 後ろに飛び退いたケフェスが、構えを改める。


「さすがですね。ボクをここまで追い詰めたこと、後悔させてあげましょう」


 般若面が正面を向く。口が開き、赤い色の魔力が収束していく。


 やばい、大技が来る。


『防いで、マージョリーたん!』


 私は強制的に盾モードとなり、衝撃にそなえる。


「必殺……ボへ!」


 ケフェスが技を放つ瞬間、ケット・シーのトシオが突撃していった。ケフェスの顔面にアッパーをかます。

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