第6話
料理を待つ間、先に入浴をさせていただき、汗を流しました。
そして王家の方々が使用するという食堂部屋へ案内されまして……。
食卓テーブルにずらりと並んだ料理の数々。
まるでブッフェですね。
しかも、まだ誰も手をつけた形跡がなく、できたての熱々です。
いただきますと言ってから順番に食べていきます。
「お、おいしい……!」
パンも柔らかいですし、肉も柔らかくジューシー。味も今まで食べていたものより濃いめです。
都内で社畜をしていたときに、年に数回の休日で焼肉店で食べた味を思い出します。
異世界の食事は、調味料が貴重な分、基本的に薄味ですからね。
「それにしても、私が先に食べてしまって良かったのですか?」
王宮にお泊まりする間、私の面倒を見てくださるという侍女(チュリップさんというらしい)に尋ねます。
しかし、彼女はふふっと笑みを浮かべながらそんなことはないと言ってきました。
「全てヴィレーナ様にご用意したものですよ。遠慮せず召し上がってください」
「これ全部を私にですか!?」
「もちろんです」
これは大変なことになりました。
私は出されたものは全て食べなきゃもったいない精神があります。
食べようと思えばフードファイターほどではありませんがそれなりにお腹に入りますが、さすがに十人前はあるであろう食事を完食する自信はありません。
それでもできるかぎりお腹に詰め込みます。
「ぐ……ふっふぅぅぅうううっ!」
半分の時点で、もう無理です。
もう少し私のお腹には頑張って欲しいのですが、すでに限界突破中。
「よほどお腹が空いていたのですね」
そうではなく、とんでもない量を用意されていたから頑張っただけです。
「明日の朝も用意してくださると聞きましたが。こんなにたくさんの料理が?」
「そうですね」
「いえ、この残したものを明日出してくだされば充分です!」
「恩人に対してそんなことをしたら、私たちが怒られてしまいますよ……」
「恩人って……」
「すでに王宮中で噂ですよ。モンスター襲来寸前だったところをヴィレーナ様の力で王都を守ってくださったのだと。それからカイン騎士団長の命も救ってくださったのでしょう」
噂の浸透が早すぎるような……。
ブブルル王国ではこれくらいはやって当然だと思われていたため、こんなに大騒ぎすることもなかったのですが。
ともかく、料理の多さはなんとかしないといけません。
「残すのはもったいないので……」
「残飯は、私たち侍女の賄いになりますから、どうぞご安心ください」
さすがにこれ以上はなにも言えませんでした。
王家のポリシーに干渉するのもどうかと思いますし。それでも、『今日のディナーの五分の一でも充分すぎるほどです』とだけ伝えておきました。
私がこんなに高待遇を受けてしまって良いのかどうか悩ましいです。
入浴と、食べ切れないほどの食事を堪能させていただき、最後にスイートルームレベルの客室へ案内されました。
徹底的に綺麗にされた部屋、別の部屋に用足しルームや簡易的な入浴部屋まであり、極め付けはベッド。
キングサイズクラスの巨大なベッドがカーテン付きで用意されていて、大の字になって寝たとしてもはみ出ることはないでしょう。
転生前の都内でこんな部屋を借りたら、一泊ウン十万はするでしょうね。
もう聖女活動とカイン騎士団長を助けた報酬以上の待遇を受けているような気がします。
お礼も含めて、明日の朝も聖なる力を発動しておきましょう。
自分から進んでやりたくなってしまうなんて気持ちは初めてでした。
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