第48話 ネネちゃんはヒマヒマ星人
パパは忙しい。
マミお姉ちゃんも、アイリお姉ちゃんも忙しい。
ユキリンも忙しい。
強い強いテキが来るんだって。
そのテキが今は来ちゃダメなんだって。
ユキリンが完全セル状態になるまで、強いテキが来るのを遅らせているんだって。
だから毎日遠くまでパパ達は出かけて、強い強いテキさんにまだ来ないでください、とお願いしに行ってるんだって。
だからネネちゃんは今日もヒマヒマ星人。
ネネちゃんは自分の事をネネちゃんと呼ぶ。ワタシと呼びなさい、とママが言うから、たまにワタチ。
でも今日は子ども園でジェシーちゃんとミルミルちゃんとかくれんぼをして、それからそれから先生に数字を教えてもらったのらー。あと文字も教えてもらったのらー。
ネネちゃん100まで数字を数えれるんだよ。すごい? ほめてほちい。抱っこして、ほめてほちい。
子ども園が終わってからヒマヒマ星人のネネちゃんは、ママに連れられて教室に行った。教室っていうのはママが先生をやっている教室で、ココにいるとネネちゃんもお勉強しなくちゃいけない。ダルダル星人。
ずっとずっと勉強をさせらるんだ。
別に勉強がキライってわけじゃないんだけど、どうしてもお勉強がしたくない時がある。
そんな時の魔法の呪文がある。
ママに近づいて行く。
そしてママの耳元で言うんだ。
「うんち」
「行ってきなさい」とママが言う。
うんちが本当にしたい、ってわけじゃない。
ネネちゃんは教室から出て、適当な木の枝を見つけて、地面にお絵描きをする。
ママとパパとマミお姉ちゃんとアイリお姉ちゃんとユキリンとうんち×3個を描き終えた時に、ネネちゃんの前に大キライな人が立っていた。
前まはパパのことを先生と呼んでいた男の人。ネネちゃんを何度も連れて行こうとした事がある男の人。
白い甲冑を着て、少し偉そうで、なんかすごくイヤな人。
ネネちゃんより、クロスの方が強いからアイツに近づくな、とパパが言っていた。
そうだ、男の人の名前はクロス。
「ママ」とネネちゃんが叫ぼうとすると、男の人がネネちゃんの口を手でふさいで喋れなくさせた。
ネネちゃんの声が男の人の手の平で掴まれて消える。
もう声は出せなかった。
背中がモゾモゾする。
心がバクバクと動いた。
ママ、パパ、と声にならない声で叫んだ。
だけどネネちゃんの声は出ない。
「違うんだ」と男の人が慌てて言った。
「君に危害を加えるつもりはない」
そしてポケットから男の人は小瓶を出した。
「誰かを助けたい時に、スーパー強いネネちゃんになるための魔法の薬だよ」
クロスは小瓶をネネちゃんのポケットに入れて、消えた。
スーパー強いネネちゃんになるための魔法の薬。
わかんないけど、男の人はなんだか寂しそうだった。
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