第30話 マミチートやんけ

 ミノタウルス戦を終えて1番強くなったのはマミだった。

 マミの能力というか、スキルというか、才能を俺は履き違えていた。

 マミはアイテムボックスが使える。後はステータスはバランスがいい。

 

 だけど、そうじゃなかった。

 マミには誰よりも優れたステータスがある。

 それは、攻撃力である。


 『攻撃力 800』


 これがマミの攻撃力である。


 ちなみにクロスは攻撃力900である。

 クロスより、ちょっと弱いじゃんと思っていた。

 それは俺の勘違いだったのだ。

 クロスは剣を含めて、攻撃力900なのだ。


 この攻撃力というのは物理攻撃のことらしい。そして装備も含めての攻撃力だった。

 クロスが剣を外すと攻撃力が下がる。

『攻撃力 150』

 これが素手の状態のクロスの攻撃力だった。


 森に入る前の正門前広場にて。

 マミに大剣をアイテムボックスから出してもらった。クロスに装備させようとしたのだ。

 マミは異空間に手を突っ込み、大剣を片手で取り出した。

 さすがに違和感があった。

 あれ? 俺でも重たかったはずなのに、女の子が片手で取り出している。


『マミのファイアボールのスキルがファイアスラッシュのスキルに変更されました』

 と頭の中に女の人のような、機械音のような声が聞こえた。


 ???


 クロスは自分の剣を鞘ごとアイリに渡していた。そして新しい武器を受け取る準備をしていた。

 そしてミノタウルスの大剣をマミから受け取った。


 俺は慌ててマミのスキルを確認しようとしたけど、頭の中で声が聞こえた。

『マミのファイアスラッシュのスキルがファイアボールに変更されました』


 ???


 マミのスキルを確認したけど、何も変化はなかった。

 剣を持った時に、また確認しよう。

 

 クロスは片手で大剣を受け取り、それが重たい事に気づいて両手に持ち直した。

 だけど持ち上げる事ができなくて、地面にドーンと落とした。


「重てぇー、こんなの持てねぇーよ」とクロスが必死になってミノタウルスの大剣を持ち上げようとした。

「だらしないわね。これぐらい持ちなさいよ」とマミが言った。

「マミみたいにバカ力じゃねーんだよ」


 クロスのステータス画面を確認した。

 クロスの攻撃力が0になっている。

 武器を変えた事で攻撃力が下がってしまった。


「アンタの剣をアイテムボックスに仕舞っておくわよ」とマミが言って、アイリが持っていた剣を掴もうとした。

「ちょっと待ってくれ。俺にはこの大剣、無理」と彼が言って、大剣を手放した。


 クロスの攻撃力が150になる。

 使えない武器を手放した事で、攻撃力が戻ったのだろう。

 そしてクロスはアイリに持たせていた剣を掴む。

「やっぱり俺はこの剣がいい」

 とクロスが言った。

 クロスの攻撃力が900に戻った。クロスにはこの剣の方が相性がいいのだろう。


「こんな大剣ぐらい、簡単に振れるじゃない」とマミは言って、大剣を拾った。


 もうスキル変更の声は聞こえなかった。

 だけど俺はマミのステータスを確認する。


 マミは両手でブンブンと大剣を振っていた。

「すごいすごい」とアイリが言って手を叩いた。


 マミのステータス。


 マミ 11歳

 レベル 10

 スキル アイテムボックス改・ファイアスラッシュ

 攻撃力 2000

 守備力 600

 魔力量 900


 攻撃力2000!!!!

 

 俺が【愛情】のスキルでブーストをかけていない時点で、桁違いの数字が出ている。

 マミは一体何モノなんだよ。

 それに剣を持ったことで、ファイアボールのスキルがファイアスラッシュの謎スキルに変更されている。


 ファイアスラッシュ……炎属性の魔力を使った斬撃。かなり強力。


 マミがアイテムボックスに大剣を仕舞おうとした。

「ちょっと待って」と俺は止めた。

「なに先生?」とマミが首を傾げた。

「その大剣、マミが装備しようか?」

 と俺が言う。

「えー、でも重たいもん」とマミ。

「ブンブン振ってたじゃねぇーか」とクロスがツッコむ。

「俺がブーストをかけたらどうだ?」

 と俺は言って、マミの頭を撫でた。金箔みたいな光が降り注ぐ。



 マミ 11歳

 レベル 10

 スキル アイテムボックス改・ファイアスラッシュ

 攻撃力 2000→4000

 守備力 600→1200

 魔力量 900→1800


 攻撃力4000!!!!


 マミが大剣を振った。

 ブン、と風を切る音。

 風圧だけでマミの前に佇んでいた木に傷がつく。


「すごい軽い」とマミが言う。

「すげぇーバカ力」とクロスが言った。

「今のマミは攻撃力4000だ」と俺が言う。

「4000!!!」と3人が驚く。

 彼等にはステータスを伝えている。だから4000がどれだけの攻撃力かは、なんとなくわかっているのだろう。

「でも先生、剣を握ったらファイアボールを出すイメージができないんだけど」とマミが言う。

「別のスキルが出ている」



 それは脅威だった。

 オークを見つけて、マミだけに戦わせた。


「ファイアスラッシュ」

 とマミが言って大剣を振る。


 大剣は伝説の魔剣のように燃えあがり、オークを切った。

 真っ二つである。

 オーバーキルだった。

 オークを真っ二つにしただけでは、マミのスキルは止まらない。

 振った勢いで、燃え上がっていた炎が飛び出し、オークの後ろに立っていた木すらも切った。……切った、と表現するのがいいのか? 焼き切った? そして切れた木が俺達に向かって倒れてくる。

「逃げろ」と俺は叫んだ。


 ちなみにマミはスキルを使わずに大剣を振るだけでもオークを一撃で倒した。

 マミチートやんけ、と俺は関西弁で呟いた。もしかしたら、もしかするかもしれない。俺達で燐国を滅ぼしたオークキングを倒せるかもしれない。

 マミとアイリは強い。

 クロスは、まぁちょっとアレだけど……もしかしたら、もしかするかも。

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