第8話 骨折

次の日、前日に薬師ギルドのギルドマスターに言われた通りに患者が山のように来た。


ほとんどの患者は骨折したようで、腕や足があらぬ方向を向いている。


「ギルドマスター。私、骨をつなぐことはできないですよ」


「構わんさ。ポーションでも上級を使わなければ治らないんだよ。まっすぐに矯正だけやってくれれば後はこっちで面倒みるさ」


「分かりました。最初の方、こちらの契約書を読んでサインをお願いします」


私は前日に患者が流れ込んでくることを把握していたため、契約書を大量に用意しておいた。


【・佳代子の治療を受けるにあたり、事前に請求された金額、またはそれに見合った魔力量を佳代子に譲渡すること

 ・診療結果が事前に打ち合わせた治療内容に及ばなかった場合、治療を再度受けるか、上記の請求を無効とすること

 ・私が闇魔法で治療を行うことに同意すること(聖魔法は使えない)

 ・治療に対して佳代子に後日意義申し立てを行わないこと

 ・上記が破られた場合、相応の神罰を受けること


という契約書にサインした方のみ治療をすることにしている


今回集まってもらった方には私が聖魔法を使えないことを話すと帰る人がいた。


今回の治療は、パラライズもしくはスリープで痛覚を遮断し、骨を矯正した。そのあと、ギルドマスターへ上級ポーションの代金を支払っている人だけ完治する形だ。


中には骨折した骨が皮膚を突き破った人もいたし、骨が変形したまま固まっている人もいた。


前者は今は治療できる気がしなかったし、後者はきれいに骨を折る手段がなければ治療できないとして後日、準備ができるまで待ってもらうことにした。


そんな調子で多くの人を診察していった結果、固定する道具が最低限必要となった。


上級ポーションの数も準備できないとのことで診療した6割の人は布で固定しただけで治療を完了した。


3割が複雑骨折や粉砕骨折で、聖魔法でなければ治療できなさそうな重症であった。


そんな中で治療を続けた結果、私の魔力量とお金がどんどん増えていく。必要な機材などもたくさんある。医師となる人材も足りない。お金はいくらあっても足りないのでもっと稼いでいかなければならない。


異世界転移しても日本にいた時とは本質的には変わらないなと思わずにはいられなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る