第7話 行列

とりあえず場所を借りることができるようになったが、私は手持ちがないことに契約書を書いてから気づいた。


その間にも、冒険者たちは治療を受ける順番を決めている。


どうしようかと悩んでいると、冒険者ギルドの受付嬢が金貨1枚をもって私の所へ駆け寄ってきた。


「なんとかギルドマスターを説得して、持ち出すことができました。あと伝言なのですが、次あったら容赦なく魔法を打ち込むからね。だとのことです」


そう言って受付嬢は帰っていった。おそらく勝手に契約書にサインをしたことで何かあったのだろう。私は手を合わせて見送った。合掌。


私は薬師ギルドのギルドマスターへ金貨を渡した。


「とりあえず1月分だけ清算してください」


「あいよ。毎度あり」


と言って大銀貨9枚と銀貨7枚を受け取った。私の頭には?マークが浮かんでいた。それを察知したミリーナちゃんが答える。


「金貨1枚は大銀貨10枚、大銀貨1枚は銀貨10枚。あと大銅貨と銅貨がある。基本お店には金貨を使ってもおつりがないから使えないよ」


私は冷や汗をかきながらミリーナちゃんへ尋ねる。


「私、冒険者ギルドでぼったくりすぎたかなぁ?」


「契約書に従わなかったのは向こう。もっと請求してもよかったくらい」


「そんなことよりあの列を何とかしてくれないかい。あんなに並ばれちゃ薬師ギルドの商売に支障が出ちゃうよ」


私のイメージでは荒くれ者の集団だった冒険者が部屋の入り口前できれいに一列で並んでいた。私は1人ずつ部屋へ招き入れて診療を行っていく。


冒険者のほとんどは傷口を殺菌しないでふさいだことで中に膿が溜まった状態であったため薬師ギルドからポーションを買い取り、冒険者ギルドで行った治療と同じことを行っていく。中にはポーション代を払えない冒険者もいたためそこは、ミリーナちゃんに鑑定をしてもらって魔力の何割を対価として貰うかを相談しながら進めていった。


途中からは私が冒険者ギルドで行った治療を見ていない人も現れ始め、聖魔法使いではないとわかると帰る者も現れたが私は一切気にしないでいた。


そうして一向に減らない患者の治療を続けて、すべての患者を見終わったころには既に辺りは暗くなっていた。


「あんた、見た目は若いのにえらい治療の腕だね。私の所にたまった患者を明日連れてくるからよろしく頼むよ」


そういわれて明日はオペの機材を見に行こうとしていたのだが、予定が組まれてしまった。


あと1人助手が欲しくなった私こと佳代子であった。

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