#24 小さな激戦の開始

「面倒やな。まさか、強いやつが2人もここにくるなんて」


この状況、結構まずい。1人ならなんとかなるが、2人でかかってくるのなら流石に苦しい。それにこいつらは人間側でも上位の実力者のようだ。服装も、一般兵の鎧のようなものではなく、漆黒の軍服と、明らかに豪華なものだった


「いや、我々も予想外だったよ。異形にも、アグノラとやれるほどの実力者がいるとは思わなかった。最悪アグノラだけでもいいかと思っていたのだが…襲撃して正解だったようだな。」

「いやほんとによかったよ。こいつ、余裕で僕より強いからね?ゼオもわかってるでしょ」


やりあえる…か。まだ小手調べのつもりやったんやけど、勘違いしてはるのか、それともワイの本気を見透かした上で言っているのか…何を考えているかはわからないが、用心に越したことはないわな。


「世辞はやめんかい。」

「世辞ではない。本心だ」


その一言を相手も、ワイも発した瞬間、抗争がはじまった。そして、両者がぶつかり、凄まじい衝撃波が発生する


「ほーん。やるなあ、結構強くやったつもりなんやけど」

「そちらもなかなかの威力だ。俺の一撃が止められるとは…なっ!」


剣を上に弾き、ワイの腕は弾かれた。それも察知してカウンターの腕を地中から伸ばす。だがそれも予測したように、相手は攻撃を避けたのだ


「へぇ?それも避けるんか。結構自信がある一撃やったんやけど…というか、反射神経やないっぽいよな。なんで避けれたんや?よかったら教えてくれん?」

「はっ、カラクリは自分で解き明かして見せるがいい。わかったとしても、攻略できるものでもないがな」

「まぁそう簡単には教えてくれんよな…仕方ない」


ワイこいつが使っているものをいろんな仮説を立てながら、予測し、このカラクリを読み解くために攻撃を仕掛けるのだった

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「もう、すでに戦闘が始まってる…ソルが戦ってくれてるのかな」

「…メイプル、時間がない、急ぐぞ。」


私はクレアちゃんを別のところへ行かせた後、戦地へ向かうヘインと出会った。もう大丈夫なのかと聞くと、心配するな。とだけ返してくれた。おそらく、大丈夫とは言えない状態なのだろう


「無理しなくてもいいんだよ。自分が暴走するのが怖いなら」

「杞憂だ。俺はなんともない。それよりもお前は俺より弱いんだから自分の命を優先したらどうだ?」


こいつ…人が心配してるのに煽ってきやがって…憎たらしいが、ヘインの言っていることは事実なので何も言い返せない


「もう心配してあげない。死んでも気にするもんか!」

「はは、じゃ気楽に死ねるな!」


そんな軽口を叩き合っていると、もうそこまで辿り着いてきていた。


「ん?また雑兵か?」

「違う、あの女の横を走ってる奴、ネクス姉様と戦った野郎だよ!」

「なるほどな」


入り口にいたのは漆黒の軍服を身に纏っている男と少年だった。明らかに、他の兵士とは違う異様な雰囲気を感じた。


「お、やっときてくれたんか。遅かったな。」

「遅くてすまなかった。…?レツハはどうした?」

「ああ、そのことなんやけど、偽物やったんや。腑に落ちん顔しとったんのも、多分思惑通りにヘインがならんかったからやろうな。」


偽物…待って、じゃあ本物はどこに…


「本物の行方はワイも知らん。こいつらしばいて情報を聞き出すつもりや。兄ちゃんには、結構世話になったからな」

「我々を倒す…か、いいだろう。その意思、明確に受け取った。名乗っていなかったな。」


そして男はこちらに向き直り、自己紹介を始める


「我々は帝国守護部隊ガーディアンズ所属の兵士だ。我は第三部隊最高責任者…そして、『十天守護者オクトヘヴンスNo.8オーガス地神『ゼオ・タストロフ』だ。」

「同じく帝国守護部隊ガーディアンズ所属、第四部隊隊長兼『十天守護者オクトヘヴンスNo.9セプテン戯神『アグノラ・ルーデンス』!子供だからって舐めないように。」


十天守護者オクトヘヴンス』まさか2人も…!?勝てるのか…!?…いや、弱気になったらだめだ。


「道理で強いわけや。『十天守護者オクトヘヴンス』なら納得やな。結構質の高いこれより強いのがあと7人もおる考えたら、憂鬱やな」

「はっ、もう先を見据えてるのか?残念だが今日ここで全員死ぬぞ」

「それはこちらのセリフだ。お前らは絶対に生かして返さない」


両者が睨み、そして戦いの火蓋は切られた。

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3対2。異形側の方が人数は多い。だが、技術面で見るとどうだろうか?無論、人間の方が洗練されている。


「『大地剛剣ガイアブレイド』!」

「『隆起する棘ウェイクニードル』!」


すぐさまヘインは対抗しようと技を繰り出す。だがその技は砕かれ、ヘインのもとへ向かっていった


「クソ…!『小さな刺棘リトルスパイク』!」


一撃目である程度威力が弱まっていたからだろうか。寸のところで止めることができていた。だがその停めた後にできた僅かな隙はダメージを与えるのに十分な隙であり


「遅い!『大地咆哮グラウンドロアー』!」

「ぐぁ…!?」


僅か一瞬の隙で、ヘインは腹部に大ダメージを負ってしまった


「まずは1人目…」

「『溶酸砲ゾイレブラスター』!」

「チッ!『地起剛壁』!」


ゼオがヘインへトドメを刺そうとしたときに間一髪でメイプルが助けに入る


「メイプル…すまん。助かった…にしてもお前、なんなんだあの力…」

「解釈を広げろって言ったのはヘインでしょ。私の異形、粘性のある液体をある程度まで再現できるようになったんだよね。それに周りの水も私の異形の液体をそこに入れればその水も私の思いのまま。だいぶ強くなったんだよ。」


メイプルは以前、ヘインと修行していた時に教えられたことを参考に、自身の異形の解釈、仮説を立てていた。そしてこの力こそが、メイプルが強くなった一因でもある


「お前、そんな頑張ってたとはな…これは俺も、負けてられないな。第二ラウンドだ!今度は俺たちと相手してもらおうか!ゼオ・タストロフ!」

「2対1か。いいだろう。お前たちに圧倒的な実力の壁があることを教えてやる。だが教えるのは俺ではない。」


そして瞬く間に、さっき立っていた男が少年と入れ替わっていた


「教えるのは僕だ。ネクス姉様を傷つけた罰、命を持って償え!最初から、本気で殺しに行ってやる!」

「容赦なく殺す。たとえ子供が相手でもな。躊躇するなよ。メイプル」

「わかってる。」


そう言って、メイプルとヘインの戦いの第二ラウンドが幕を上げたのだった

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「あれま、あきまへんわ」

「何か以外か?俺とアグノラが入れ替わってたことが。」


ソルグロスは首を横に振り。いいや。という否定の言葉を言う


「別に以外でもなんでもないわ。そもそも、あの少年とワイの実力は違ってた。そもそもなんでこう言う分配になったか気になってたんやけど…なるほどな。少しでも消耗させてそっちを有利にしよういう魂胆か。どこまでも狡くて賢いやつやなぁ」


ゼオは驚いた表情をし、意外だな、と一言言う


「異形にも少しは考えることができるものがいたとは。賢い者もいると言うことか…認識を改めないといけないな。」

「煽っとるんか褒めとるんかどっちかにしてくれん?まぁええわ、どうせ、アンタはここで死ぬんやからな」

「俺の実力を見誤ってもらっては困るな。そこは減点ポイントだ」


その軽い会話が終わった後、今この場にいる者誰1人として介在できない2人の戦闘がはじまった

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