謝罪会見 14
烏丸氏は怖じる様子もなく扉の外に出て、前方の岩陰まで足を運ぶ。
するとすぐに他の三人もいったん顔を見合わせてから後を追って駆けつけてきた。
そしてしゃがみ込んだ烏丸氏が肩を強く揺すると倒れていたその人は顔をしかめながら目蓋を開いた。
「おい、大丈夫か。ん?あんたはこよみさんの側近のたしか、コンティー」
「いえ、近藤です。そんなことより、か、烏丸様。大変です。こよみ様が……」
烏丸氏につかみ掛かる勢いで上半身を起こした近藤はその寸前に起こったことを早口で打ち明けた。
「なに?拐われただと、こよみさんが?」
烏丸氏がそう云って目を瞠ると、背後に立つ三人もそろって息を呑んだ。
「ええ、那智氏が現れた途端、彼らが豹変して」
「え、いったいどういうこと?鐘古さんたちはどこに連れて行かれたのよ、コンティー」
ブロ子さんが詰め寄ると近藤は首を振った。
「近藤です。分かりません。ですが、おそらくあの城だと思います。あそこが彼らのアジトですから」
「彼らって誰よ。え、やっぱ地底人なの、コンティー」
青ざめながらも胸ぐらをつかんできた緋雪氏に近藤はやはり首を振った。
「いえ、近藤です。いえ、地底人ではありません」
「じゃあ、原生生物?タマウガチ?それともクオンガタリ?やっぱ、ここってアビスなんでしょ、コンティー」
怖がっているのか、嬉しがっているのか、モジモジと体をくねらせながら頭皮をペチペチと叩いてくる七倉氏にも近藤は訳が分からないといった風に再度首を
振る。
「いえ、近藤です。えっと、私だってそろそろ怒りますけどよろしいですか」
そのしかめっつらの顎を指で持ち上げたのは烏丸氏だった。
「じゃあ、なんだ。いったい誰が彼らを拐った、コンティー」
冷徹に突き通すような烏丸氏の視線に近藤は一度うつむいて深いため息をつき、それから目線を上げまっすぐに烏丸氏の瞳を見据えた。
「こよみ様からはサプライズだから黙っているようにと云われていたのですが、もはやそんな悠長な場合でもないでしょう。分かりました。この場所のことをお伝えします。ただ……ひとつだけ申し上げておきたいことがあります」
「……なんだ」
岩に吸い込まれていくように低く通る美声、そして見つめていると三秒で魅了されてしまいそうなその端正な顔立ちに、それでも近藤はこれだけは言っておかねばならないと深く息を吸いなんとか気を取り直して口を開いた。
「あの、烏丸様。……やはり、コンティーはやめていただけないでしょうか」
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