謝罪会見 6
「え、F-16スクランブル?またKさんったらタカ派の官僚に押し切られたのね。まったく、あの人には総理としての自覚がないのかしら。ええ、分かったわ。心配はいらない。官邸には私から連絡しておくわ」
烏丸千弦氏とのジャミング通信を終えた鐘古こよみ氏はふうっと息を吐き、次いで黒壇の書斎机の端に据えている時代めいたアナログの受話器を持ち上げた。
そして数コール後に繋がった相手に開口一番、叱責と脅し文句を告げる。
「Kさん、今回のことは干渉しないように言っておいたはずよね。もし邪魔をするというのなら南太平洋で開発中の軌道エレベータープラントの件、無かったことにさせてもらうけれどいいかしら。こっちは別に困らないのよ。技術もお金も無条件に出すから参入させて欲しいという国や企業が世界中で手を挙げているわけだし」
すると一国の首相であるK氏は口ごもり、そしていくつもの弁解を言い連ねたが鐘古氏はそれを無碍もなく即座に却下した。
「言い訳なんて聞きたくない。どうなの?返事は二つにひとつ。今回の件を黙って傍観するか、無理に介入して巨万の利益をみすみす手放すか。さあ、どっちにする?」
相手はしばし黙ったあと、短く是と答えた。
「賢い選択だわ。ならばすぐにF-16を基地に戻しなさい。そしてこれ以上干渉しないこと。安心なさい。そうしてもらえれば私たちは国民にもあなたたちにも決して危害を加えない。約束するわ」
そう告げて鐘古氏は官邸とのホットラインを切った。
そしておもむろに本革のビジネスチェアから立ち上がると後ろに振り向き、夕陽を受けてオレンジ色に染まるカーテンを指でそっと開いた。
バベルと呼ばれるその高層タワーから見下ろすとそこには地獄がある。
瓦礫に覆われたような白い地表。
あちこちに蟻塚のように聳り立つ石碑と石積み。
三途の川。血の池地獄。極楽浜。
つまりそこは恐山なのであった。
つづく
もうちょっと進めたかったんですけど、今日はここまでで限界でした。
また明日、更新します。
というか、やっと着きましたよ、恐山。違うか(笑)
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