第四章 二話 後輩とファミレス

「まさかお二人が夢咲優也だったとは...驚きでしたよー」


 猪瀬達は辻元が小説家と分かり、そこで解散するのもしのびないのでファミレスへと来て、小説談義をしようということになった。

だが、辻元がすごく興奮し出来なくていた。

 辻元は驚きながらも同期に合えたことが嬉しく目を輝やかせ、興奮している。


「こっちも驚いたわよ! たまたま知り合った人が同じ出版社でやってる小説家だなんて信じられないわよ!」

「あぁ」


 猪瀬達も運命のいたずらというものがあるのだなと驚いていた。


「そういえばお二人は当然統一マッチには挑戦するんですよね! 夢咲先生のメイド小説がおがめるなんて楽しみです!」


 辻元は興奮し、二人を捲し立てる。

その行動はまさに尊敬するスポーツ選手と出会ったときのような興奮ようだった。

 

「取り敢えずこれでも飲んで落ち着きなさい」

「ありがとうございます! この珈琲美味しいですね!」


 夢咲は辻元を落ち着かせるべく取ってきた珈琲を飲ませる。

だがカフェインの効果なのかは定かではないが落ち着きはしなかった。


「まぁ、ファンっていうのはよく分かったわ。」


 夢咲は始めてのファンとの対面で少し恥ずかしい気持ちになっていた。


「えぇ!ファンなんてもんじゃありませんよ大ファンなんです!」

「ありがとう。それよりあなたも小説家何でしょう?あなたの作品のことも知りたいわ。」


夢咲は恥ずかしがって、話をそらす半分、このボーイシュな少女がどんな小説を書くか興味があった。


「小説家なんて...まだ本も出してないですし...」

「本を出してないから小説家じゃないと言うのは違うと思うな、小説を書いてるなら小説家だよ。」

「あ、ありがとうございます!猪瀬先生にそういって貰えると...」

 

 猪瀬は彼女を励ましたつもりが涙を流し始めたので動揺する。


「な、なにも無くほどじゃ!」

「あぁー また泣かしたわねこの女泣かし!」

「じゃかまし!」

 

 夢咲は自分も泣かされたことを思い出し、煽る。

それをいつものように投げ返す猪瀬、この二人は凄く仲がいいんだなと辻元には思えた。

こんな風にいいあってるのに顔は笑顔で仲良さを強調した。


「ずるいです。私にもそんな友達が欲しいです!」

「あら、私達もう友達だと思ってたんだけど?」

「え!?」


辻元は夢咲の友達発言に驚き、思う。

これが陽キャでよく聞く、一度話したら友達理論かと。


「う、嬉しいです。わ、私同じ仕事の友達初めてでそれに尊敬する夢咲先生となんて...」


 辻元はより一層鳴き始める。

その大きな泣き声に反応したのか、皆がこちらを見てくる。


「ちょ、止めてよ! これぐらいで...」


 夢咲は自分の変化に驚いていた。

この前なら私も彼女と同じくこれほど大きく泣いていただろう。

 こうも変わったのも猪瀬と出会ったからだと考える。

そして夢咲もつられて涙を流し始める。


(ありがとう猪瀬...私を変えてくれて...)


「もう落ち着けよ二人とも!ほら、これでも飲んで! お前は顔を拭け!」


 猪瀬は周りからの最低男としての視線を避けるために二人を泣き止ませようとする。


「あ、ありがとうございます!」

「あ、ありがと」

 

 二人はハンカチで顔を拭き、落ち着かせる。

全く手がかかる二人だなと猪瀬は二人の身長も相まって、保護者のような気持ちになる。


「いて! いてぇよ夢咲!」

「失礼な事考えてたでしょ?」

 

 夢咲は付き合いが長いからなのか、猪瀬の考えていることがなんとなく分かっていた。

その考えをただすために足を蹴り続ける。


「ごめんって...謝るから! 足蹴るの止めろ!」



 「す、すいません取り乱してしまって。」

 

 どうやらやっと辻元は驚いた様子だった。

落ち着くまでに猪瀬の足は赤くなっていたが。


「やっと落ち着いた改めてよろしく。」


 夢咲は手を差し出し、握手を求める。

辻元は緊張しながらもその手をとる。


「こ、こちらこそ宜しくです! 先輩!」

「先輩って同期でしょ?」

「いや尊敬する夢咲先生達を同期としてなんか扱えません!それに先に賞を取った先輩ですし!」

「そ、そうそれがいいなら...」

「いいのかよ。」


 夢咲はそのテンションに引っ張られ、先輩よびを認める。


「もうこんな時間だ!  バイトに遅れる! 今日はありがとうございました!」


辻元は時間に気付き、足早に去っていく。


「まるで台風ね...あの子の小説気になるわ。」

「あぁ。」


 二人はあの台風のようにコロコロ変わる少女の小説が気になって仕方なかった。

 

「今度見せて貰うようにお願いしてみるか?」

「あの子多分見せてくれないわよ。見て貰うなんておこがましいとかいって。」

「そうだな。」


 

 改めて現れた小説家辻元。

その小説をすぐ読むことになるのは二人には分かっていなかった。











 




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少女小説家と出会ったら小説家人生が大きく変わった件 猫カイト @Neko822

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