第11話 独裁者の誕生

ニンジャ・マスター岡田の影の活躍を誰ひとり知ることもなくセンキョは終わり、日系宇宙ステーション群は宇宙全域に旅立っていった。一年後の再会を誓いつつ…しかし、その直後から全ステーションにおいて、「ニンジャ優遇政策」が次々にオートメーション施行されるようになっていった。


―おかしい―。


いろいろと考えあぐねたニンジャ・マスター岡田は、ある結論にたどり着いた。


アルゴリズムに学習させた「幸せな瞬間」のイメージは、岡田がストックしていた記憶データだから、ニンジャだらけだった。さらに、岡田自身の笑顔の自撮りが一番多い。


つまり、“ニンジャ・マスター岡田と部下のニンジャ達を幸せにする”という目標設定がされ、その実現のためのアルゴリズムを生成させ、固定してしまったようである。


ニンジャ・マスター岡田は期せずして全日系宇宙ステーションをハックし、クーデターを起こし、みずからが最高権力者になっていた。いまや岡田が間の抜けた笑顔でいることが、もっとも重要な達成課題なのだ―。


―なんてこった。まるで独裁者じゃないか―。岡田は苦笑いする。


「今後は全住民の行動データだけじゃなく、感情データや思考データも取得したほうがよさそうだな。片手落ちの政策が減り、もっと効率的な政治が行われるだろう。メタデータじゃなくて、マイナンバーに紐づいたデータ本体の取得も、導入を検討すべきかな…!」


ニンジャ・マスター岡田は、期せずしてさらなる専横を企図していた。


<終>

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スペイス・ニンジャ・カンパニー 林 晶 @LingJing

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