第11話 オーストラリアの危機 7

 俺はニーナさんに喝を入れられ、デビルと向かい合う。


「これ以上、ニーナさんやルージュさん、それに他の契約者たちにカッコ悪い戦いを見せるわけにはいかないよな」


 そう呟きつつ、全身に雷を纏った状態で突っ込む。


(雷を纏い続けるのも後3分程度が限界。それまでに終わらせる!)


 デビルは俺のスピードについてこれるようで、俺の攻撃を紙一重で避け続ける。


(拳に纏っている黒い炎がどういうもかはわからない。おそらく、威力を底上げするものだろう)


 拳からの攻撃に注意しつつ、攻撃し続ける。


 俺の攻撃をバックステップで距離をとったデビルが正拳突きをする。


 距離があるため、正拳突きを喰らうことはなかったが、正拳突きの拳から黒い炎が飛んでくる。


「ヤベっ!」


 まさかの攻撃で咄嗟に回避行動をする。


「ほら、胴体がガラ空きだぜ?」


「っ!」


 呼吸を忘れるほどの反射レベルで回避行動を取るが間に合わず…


「がはっ!」


 俺の胴体へデビルの攻撃がクリンヒットする。


 意識が飛びそうになるほどの衝撃と、肋骨の下にある肺を攻撃されたことで、呼吸ができなくなる。


 デビルの攻撃を喰らう瞬間に後方へジャンプしたことで、少しばかりダメージを減らすことはできたが、デビルの攻撃力が高く、地面を数100メートルほど転がる。


(肋骨が何本かやられたっ!それ以外もダメージが大きい!雷を全身に纏ってなかったら死んでた!)


 このまま意識を手放したくなるが、それを許してくれる相手ではなく、転がった俺に追撃してくる。


「寝てる場合じゃねぇぞ!」


 デビルがジャンプして寝転がってる俺の頭に拳を叩き込もうとする。


 それを地面を転がるように回避して立ち上がる。


 そして、口から吐血した血を拭いながら体勢を整える。


「おい、立ってるのもやっとじゃねぇのか?」


「そんなこと……ねぇ!」


 俺は自分の身体に鞭を入れる。


「お前はたくさんの契約者や妖精族を殺し、罪のない人々の命までも奪った!絶対、お前は俺が倒す!」


「そう言っていられるのも今のうちだ!」


 そう言いながら俺に突っ込んでくる。


 おそらく、この一撃で終わらせようとしてる。


(ようやく、お前から突っ込んできたか。「相手にトドメを刺す瞬間が1番油断してる」って言葉はその通りなんだな)


 突っ込んでくるということは、急な回避行動はできない。


「この瞬間を待ってたぜ!レスティ真明流、初の型〈紫電〉」


 俺は突っ込んでくるデビルへ、ものすごいスピードで突きを繰り出す。


 この技は雷閃によって雷を纏った状態で突進しつつ、突きの攻撃を繰り出す技で、今までの1.5倍のスピードで突き攻撃を行う。


 ただ、突きに重点した攻撃となっており、方向転換や回避行動はできないのが欠点だ。


「!?」


 拳を振りかぶっていたデビルは〈紫電〉を防ぐことができず、俺はデビルの身体に穴を空ける。


「ぐはっ!」


 デビルは胴体に大きな穴を空け、崩れ落ちる。


「ゆ、油断した……まさか俺が負ける……とは……」


「俺とお前には背負ってる重さが違う。それが敗因だ」


「そう……か」


 そう言ってデビルが消滅する。


「【迅雷】がデビルに勝った!」


「さすが世界最強の契約者!」


“うぉぉぉ!!!”と、俺がデビルを倒したことに、周りの契約者たちが盛り上がる。


「レベル3を【疾風】が倒し、デビルを【迅雷】が倒した!残りの残党を片付ければ、我々の勝利だ!」


 ルージュさんが声を張る。


 その声に応えるように、みんなが残党を倒していく。


 俺はその様子を見て、地面に倒れ込む。


「肋骨折れてるなぁ。あと、ちょっと血を流しすぎたか。雷閃も長時間使いすぎて、筋肉が悲鳴を上げてる」


 デビルを倒した安堵からアドレナリンが切れ、デビルから喰らったダメージで痛み始める。


「お疲れ、【迅雷】」


 すると、ニーナさんが寝転がってる俺に声をかける。


「ニーナさんもお疲れ様でした。助けに来ていただきありがとうございます」


「気にするな。それよりも、痛そうだな。大丈夫か?」


「大丈夫ですが、しばらく動けそうにないですね」


「待ってろ。回復できる人を呼んでくるから」


「ありがとうございます」


 そう言ってニーナさんが離れていく。


(俺やニーナさんがいなくても問題なく残党を倒すことができそうだ)


「お疲れ様、ナギくん」


 俺の武器となっていたレスティアが実体化して声をかける。


「あぁ、レスティアもありがと」


「デビルに勝つなんて、さすがナギくんね。これがデビルの初討伐よ」


「ははっ、それは名誉なことだ」


「しばらく、休んでていいわよ。超越者のニーナさんもいるからナギくんのやることなんてないわ」


「なら、しばらく休ませてもらうよ」


 そう呟いて、俺は意識を手放した。

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