第6話 オーストラリアの危機 2(???視点)

〜???視点〜


 時は少し遡る。


 オーストラリアでデビルたちの出現が確認された頃、インドでは1人の美少女が暴れていた。


「うるせぇ!!アタシは今すぐオーストラリアに行くんだ!アタシの助けを待ってる人がいるから!」


「落ち着いてください!ニーナ様!」


「超越者のニーナ様がいなくなったら、我が国を守る戦力が激減してしまいます!」


 その女の子を、メイド服を着た女の子たちが必死に押さえている。


「邪魔するなら容赦しねぇぞ!」


「「ひっ!」」


 暴れている女の子がメイドたちを睨む。


「へぇ、邪魔すると何かマズイことでもされるのかい?」


 すると、その様子を見ていた80代くらいのお婆さんが、暴れているニーナに近づく。


「そ、そうだ!婆さんにとってマズイことをする!」


「へぇー、それは気になるね。言ってごらん?」


「うっ!えーっと……ア、アタシが嫌いな食べ物を婆さんに無理矢理食べさせるっ!」


「私の食事摂取量が減ってることを心配してくれてるんだね。ありがとう、ニーナ」


「ち、違うわっ!」


 図星をつかれたようで、顔を真っ赤にして否定するニーナ。


「誤魔化さなくていいのよ。私の食事摂取量が気になって、時々厨房のコックに聞いてるの知ってるから」


「〜〜〜っ!」


 お婆さんの追撃に、さらに顔を赤くする。


「ア、アタシはオーストラリアに行くからなっ!絶対、邪魔するなよっ!」


「えぇ、この国は残ってる契約者で守るから、行ってきなさい。ただし、絶対無事に帰ってくるのよ」


 婆さんから思いもよらない言葉が返ってきたのか、ニーナが固まる。


「…………ありがとう、婆さん」


「え?聞こえなかったよ?最近耳が遠くて……」


「う、うるさいっ!行ってくる!」


 そう言って、ニーナは羽を駆使して屋敷から飛び去る。


「あ〜、怖かった……」


「超越者のニーナ様が暴れ出したら、止めることのできる人なんて、この国にいませんからね」


 先程、ニーナを止めに入っていたメイド2人が安堵する。


「大丈夫よ。あの子はそんなことしないから」


「今にも衝動に任せてこの屋敷を壊す勢いがありましたが……」


「何故そのように思われるのでしょうか?」


「ふふふ、それは『純真無垢で清らかなる乙女』だからよ。言動はヤンキーみたいだけど、根はとても良い子で、人が悲しむようなことは絶対にできない女の子だから」


『純真無垢で清らかなる乙女』しか契約者になれないと言われている。


 つまり、ニーナは妖精が認めるほど、素晴らしい性格の持ち主ということだ。


 その言葉に「「あー!」」と、メイド2人が納得する。


「さぁ、2人とも。超越者のニーナがインドからいなくなったんだ。今から忙しくなるよ」


「「はいっ!」」


 メイド2人の元気な声が屋敷に響いた。




〜???視点〜


 時は少し遡る。


 オーストラリアでデビルたちの出現が確認された頃、アメリカのロサンゼルスでは、とある教会で1人の美少女が暴れていた。


「いやです!私はオーストラリアに行くと決めました!」


「だから、超越者のソフィー様がアメリカからいなくなったら困るんです!お願いですから、オーストラリアに行かないでください!きっと、ソフィー様以外の超越者がオーストラリアに行きますから!」


 その女の子を、教会の正装を着込んだ70代くらいの男性が必死に止めている。


「やっぱり、私以外の超越者がオーストラリアに行きますよね?」


「はい!だから、ソフィー様が行かなくても……」


「ちなみに、誰がオーストラリアに行くと思いますか?」


「えーっと……オーストラリアの近くにいらっしゃる超越者は助けに行くと思いますので、日本にいる男性の超越者が向かうと思います。だから、ソフィー様は行かなくても……」


「ですよね!じゃ、行ってきます!」


「私の話、聞いてましたか!?」


 女の子は男性の話を無視して、服の上から羽を出現させる。


「邪魔しないでください!私は王子様と一緒にオーストラリアを救うんです!そして、王子様から『一緒に戦ってくれてありがとう。お前がいなかったらオーストラリアを守れなかった。結婚してくれ』って言われるんです!」


「王子様って誰ですか!オーストラリアに王子様なんていませんよ!」


「うるさいです!ロサンゼルスからオーストラリアまで6時間は飛ばないといけないんです!今は一分一秒を争ってるんです!」


「争わなくていいです!ソフィー様はここにいるだけでいいんです!お願いですから、アメリカからいなくならないでください!」


「うるさいです!ロサンゼルスからオーストラリアまで6時間は飛ばないといけないんです!今は一分一秒を争ってるんです!」


「それはさっき聞きましたから!」


 ソフィーが男性に許可をもらおうとするが、一向に許可が降りない。


「こうなったら仕方ないですね」


 と、ソフィーがぶつぶつと呟く。


「何をぶつぶつ言ってるのかは分かりませんが、ソフィー様はここで待機を……」


「あーっ!あそこに蝶々がっ!」


「ふっ、私がソフィー様から目を離した隙にいなくなるつもりでしょうが、そんな手に引っかかる私では……って、瞬きしたら消えたしっ!」


 男性が瞬きした一瞬で男性の視界からソフィーが消える。


「えぇ……大統領に何と報告すればいいのやら……ってか、王子様って誰?」


 そんなことを呟きながら、教会の中で男性が頭を抱えた。

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