第47話 アマジョン
「ああああ! もどってるぅぅぅ!!! もどったぁぁぁぁ!!」
ほのかさんは自分の身体をぺたぺた触っている。
男の俺がここにいることを忘れているみたいだ。
まあそりゃそうだ、ほのかさんは一度は命を奪われて死んだのだ。
仲間もみんな皆殺しにされて、絶望の中アンデッドモンスターとして存在してた。
そこから生き返ることができたのだ。
感動で俺の視線なんて気にする余裕なんてないのだろう。
いやしかしこれは……。
たぷんたぷんのハリのあるおっぱいが。
やばい。
ほのかさんはその重みを確かめるように両手で胸を触っている。
実際、すごく重そう……。なにしろでかいからなー。
俺はうっとりとそれを眺める。
ふわー。
えへへへー。
ほのかさんは前衛も務められる僧侶、けっこう身体も鍛えている。
しなやかな筋肉に、それなりのやーらかそうな脂肪がのっていて、実に健康的な美。
すらりとした長い脚は見るだけでドキッとするし、下の方のお毛々はすごく控えめお上品。
同級生の素っ裸、こいつはすんごい興奮するんですけど……。
と、突然、桜子が俺に抱き着いてきた。
「な、なんだよ……」
「よかったぁ、って思ったの」
「なにが」
「生きてて」
「誰が」
「慎太郎が。……あのね、死んだと思ったの。和彦君にそう聞いてたから。そっからね、もう私、夢の中を生きてるみたいで。全部がふわふわしてて、夢みたいだと思ってた。私たち幼馴染でしょ、私ね、人生で隣に慎太郎がいなかったことなんて、なかったんだよ」
そう言って、桜子はぎゅうぎゅうと俺の胴体を締め上げる。
く、くるしい……。
「ほんとは一緒のパーティで探索したかったのに、パーティを決める日にあんた風邪ひいちゃって休んじゃってさ。先生が勝手にパーティを決めちゃってさ。もう最悪だった。そしたら死んじゃったって聞いて……死んじゃったって……。生きててよかった。よかったよ、慎太郎……なんか、終わったらやっと実感湧いたよ……」
桜子の目からあふれ出る涙。
彼女は顔を俺の服にぐいぐいと押し付けてそれを拭く。
あ、鼻水まで!
あーもうしょうがねえなあ。
そして俺から離れると、今度はほのかさんに抱きついた。
「ほのかさんもだよ! 大事なクラスメートだったのに……。私ね、ほのかさんのお葬式に出たんだよ。ほのかさんの遺影、きれいだったよ……」
「自分のお葬式の話を聞くのはきついなあ……。遺影、どの写真使ったんだろ……」
「盛れてたやつ」
「盛れてたやつかぁ~。普通のでよかったのに」
「あとそろそろ服着ようよ……慎太郎が見てる」
「そうだね、来ていた制服、どっか行っちゃった、なんか着る物あるかな」
そこに、ご先祖様が口をはさんでくる。
「バニーならあるでー」
「サイズあります?」
「それ何カップや?」
「Hカップです」
「こうゆうこともあるんやないかと思って、数日前、ほのかをアンデッドとして蘇らせたときにアマジョンで注文しといたわ……」
先見の明がすごすぎる。
さすがご先祖様。
さすごせ。
と、そこにほんとにアマジョンの配達員がやってきた。
いやいやいや。
待て待て待て。
ここ、アンデッドダンジョンの地下十階だぞ?
そんな簡単に人間が一人でこんなところまで来られるもんじゃないのに?
「こんちわー。あのー、すいませんけどあたしが来るときはドラゴンゾンビ系は退避させといてもらっていいですか? 無駄に戦闘するのかったるいんですけど……」
やってきたのは小柄なサイドテールの女の子。
段ボールの箱をご先祖様に渡す。
「お、いつもおおきにな」
「あれ、いつのまに関西弁になってるんです?」
不思議そうに聞く配達員の女の子。
つまり今までふだんは関西弁なんて使ってなかったってことだよな。
……ほんとうにエセ関西弁キャラ、思い付きでやってたんだなご先祖様……。
と、そこで素っ裸のほのかさんに気付いて、
「うわっびっくりしたっ」
まあそりゃそうだよな、ダンジョンの最深部には普通、全裸の女子高生はいない。
と思ったんだが。
そのびっくりは俺が思ったのとは違う理由によるものだった。
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