最終章

第46話 スイカ

 ダンジョンの床に魔法陣が描かれた。

 その真ん中にマゼグロンクリスタルを抱いたほのかさんが立っている。

 そう、いよいよほのかさんを生き返らせる儀式が始まるのだ。

 ご先祖さまがやってきて――。

 いつもの甘々スイートロリータ服で魔法陣の前に立つご先祖様。

 いよいよはじまるぞ……!

 固唾をのんで見守る。

 両手をバッ! とあげてポーズをとるご先祖様。

 元気を集めてるみたいだ、かっこいい!

 空気が震える。

 はじまるのだ、死から生への復活の儀式が……!


 ついに、ご先祖様が口をひらいた……!


 そして、呪文の詠唱が始まる……!!


「かけまくもかしこきいざなぎのおおかみ……」

「ちょ、ちょっとストップストップ」

「なんや、神事はもうはじまっとんのやぞ」

「え、これって和風なんだ?」


 ご先祖様はハア、とため息をついて、


「あのなあ、江戸時代生まれで山形県出羽の国の小梅ちゃんが『わが全知全能の唯一神よっ!』とかいう方がよっぽど変やろがい! ここは日本なんやからそらお願いするのは八百万の神様やんけ」


 あー、まあ、言われて見ればそりゃそうか……。


「もう邪魔すんなよ。寸止めされると神様もおこるでしかし」

「あ、はい」

「コホン。……かけまくもかしこき いざなぎのおおかみ つくしのひむかのたちはなのおどのあはぎはらに みそぎはらえへたまいしときに……」


 祝詞のりとの詠唱……詠唱でいいのか、これ? とにかく詠唱をつづけるご先祖様。

 するとほのかさんの足元の魔法陣が光り輝いた。

 ……魔法陣?

 ここは洋風なのな。

 和洋折衷かな?


「かしこみかしこみももうすぅぅ~~~~~」


 ご先祖様が腰を深くおってお辞儀する。

 その瞬間、ほのかさんが持っていたマゼグロンクリスタルが、シュバッ! と光り輝いた。

 まぶしくてなにも見えなくなる。

 光は虹色にめまぐるしく色を変えて輝き続ける。


 そして――。


 ついに、ひかりがすうっとひいていった。

 魔法陣の真ん中にいるのは――。

 完全に人間に戻った、ほのかさんだった。

 なんで完全に人間に戻ったのが俺からわかったのかというと、ほのかさんは素っ裸になっていたからだった。


「くそっくそっ! おまえもでっかいやんけー! ぜったい貧乳仲間だと思ってたのに」


 じたばたと地団太を踏んで悔しがる(?)ご先祖様。

 うむ、たしかにこれは、スイカみたいなでっかいのがふたつ……。


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