第2話 ご先祖様
「え? なんで子孫だってわかったのかって? そりゃあたしだって子供はかわいいし、その子供もかわいいし、ずっと遠くから観察してたんだよー。あたし透明になれるからあんたのことずっと見てた」
俺のご先祖様は、チビな少女だった。
ショートカットの、ぱっと見中学生にしか見えない少女。
着ているのはなぜかふわふわひらひらのロリータファッション。
白とピンクのフリルとレースがこれでもか! と特盛になった、いわゆる甘ロリファッションってやつだ。
白黒のゴスロリならまだしっくりくるかもしれんが、甘ロリかよ。
しかしまあ、このダンジョンのボスがロリータ少女の姿をしたアンデッドキングだっていうのは、わりと有名な話だった。
「ああん? これでも身体年齢は十八だよ? その年でお前のひいひいひいひいばあちゃん、かな? よくわかんないけどさ、とにかく子供を産んでから、水害を治める人柱として埋められたの。ひどい話だよねー。そこから不死者としてよみがえって、ほそぼそと生きてきたんだけどさ」
生きてるとはいわないと思う。
「ほら、最近ダンジョンとやらができたからそこを住処にしたんだよ。んで、あたしの力を使ってアンデッドモンスターを呼び込んできたのさ。あ、この服は趣味ね。やっぱあたしも女の子だからさ、こういうフリルとかレースとか前にするとテンションがあがるんだよね、でさでさ……」
ご先祖様、わりとおしゃべりだなあ。
パーティメンバーにぼこぼこにやられたので体中が痛い。
ご先祖様の話も耳に入ってこない。
あーあ、左手の人差し指、根元から切り落とされちゃってる。
両耳も、耳たぶが切り落とされちゃって、もうさっきから痛いどころの話じゃない。
俺は戦士職だから、回復魔法も使えないし……。
あとなによりメンタルがやばい。
美香子ちゃん、俺のこと殺すほど嫌いだったんだ……。
片思いの同級生の女の子に鈍器で殴られて殺されかけた男なんて、全世界探しても俺くらいじゃね?
死にたい。
「そんな顔するなよ、慎太郎……先祖のあたしまで悲しくなっちゃうだろ~~」
「もう、殺してください……死にたい……」
「子孫を殺す先祖がいるかよ、馬鹿かよ、いないよ」
なんか安心感のある言い方をするご先祖様。
「しょうがないなあ。えっと、うちのダンジョンに回復魔法使えるやついたかなあ……。うちらアンデッドモンスターって、回復魔法は逆にダメージになるからなあ……」
んー、と小首をかしげてから、ロリータファッションのご先祖様は、ぽん、と手のひらを叩いた。
「いたいた、あいつが使えるはずだ」
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