第6話

「独立するなんて簡単に言うが、王国は黙っちゃいないだろ?」


 アストンは話を戻した。


「ゴタゴタ言って来たら滅ぼしちゃえばいいじゃないの」


 アイリスはさも当然のようにサラッと言い放った。


「滅ぼすってお前な...」


「お頭! やっちまいやしょう!」


「そうだそうだ! やっちまえ!」


 アイリスの一言で火が点いた部下達を見て、アストンは頭を抱えてしまった。



◇◇◇



 一方その頃、イーサンは父親である国王の病室に呼び出されていた。


「こんの大バカ者がぁ!」


「へぐぁっ!」


 病人とは思えないほど逞しい拳の一撃で、国王はイーサンを地に沈めた。


「ハァ...ハァ...貴様は我が王国を潰すつもりかぁ! よりによってあの武闘派公爵家を怒らせるなんて! この大タワケがぁ! 謝れ! 誠心誠意謝って来い! 許しを乞うまで戻って来るな! もし許して貰えなかったら、貴様は廃嫡して弟のフィリップに後を継がせる!」


「そ、そんな! い、いくらなんでもそれは...」


「やっかましい! とっとと行けい!」


「はぶしっ!」


 国王からもう一発食らったイーサンは、這う這うの体で病室を出てアイリスの家へと向かった。



◇◇◇



「お頭、クサレ王太子がやって来ましたぜ」


「フン、大方パパに怒られたんで慌てて謝りにでも来たんだろう」


「どうしやす?」


「そうだな...アイリス、どうする?」


 アストンは傍らに居るアイリスに尋ねた。


「最後にもう一度だけ会ってあげましょうか」


「分かった。おい、連れて来い」


「分かりやした」


 部下に連れられてやって来たイーサンの頬は腫れ上がっていた。国王にぶたれたんだろうなとアイリスは思った。


「今更なんの用ですか?」


「そ、その...済まなかった、アイリス。あれはその...ほんの出来心だったんだ...もうしないからどうか許して欲しい...頼む...頼むから出て行かないでくれ...」


 イーサンは土下座せんばかりの低姿勢で許しを乞うた。


「安心して下さい。出て行きませんよ」


「そうか...良かった...ありがとう...」


 イーサンは心からホッとした。


「その代わり、我が公爵領は独立することにしましたから」


「へっ!?」


「次は戦場でお会いしましょうね?」


「えっ!?」


「だから、独立戦争でお会いしましょうね? さようなら」


「お、おい! ま、待ってくれ! アイリス~!」


 イーサンの叫びも空しく、アイリスは振り返ることなくその場を後にした。


 それから一ヶ月後、この地にあった王国は滅び、新しい国が建国されることになる。



~ fin. ~

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冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります 真理亜 @maria-mina

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