第4話 寝室の会話②
機密事項とは簡単に明かしてはいけないもののことをいう。
なのに目の前の兵士は10秒前の自分の発言を覆すように、あっさりとその機密事項らしいことを喋った。
「ちょっとカンリー支部団長!いまご自分で“これは機密事項だ”っておっしゃいましたよねっ!?」
咎められた部下と思われる兵士が戸惑う様子で聞いた。
「ああそうだが、問題はない。じきに魔道士団の者達と大規模な調査団が派遣されることは決まっている。人目につくのは避けられないことだ。」
支部団長らしい男は平然と答えた。
どうやら上司と部下の理不尽な主従関係は
王国の騎士団であっても存在するらしい。
引きこもりの俺は社会の縮図を見ているようで1人気を沈めてしまった。
「もう一度言うがウグルの森のダンジョンの件は既に我々が取り扱っている。
、、ただ、、それだけを言いに、こんな派手な登場をしたというのなら、、君たちをただで返すわけには、行かなくなるのだが、、。」
まずいことになった。
この隣のバカ大男のせいで最悪だ。
「どうなんだね?体調を悪くされた国王様の寝室に、扉をぶち破って乱入して来たお二人さん。ん?何か重要な話があるのだろう?」
支部団長らしい男が繰り返し圧をかけてくる。
ないさ、たった今俺とこの大男は相応な処罰をただ待つだけになった愚かな平民になったんだからな。
すると
「ごほっ!ごほごほっ!」
再び国王が体を丸めるように大きく咳き込んだ。かなり体調が悪化しているらしい。
「国王っ!やっぱり演説のせいでかなり体調が悪化しておられる、、!」
救護のものと思われる者達が国王の側に駆け寄るのを見ながら1人の兵士が言った。
「、、さあどうなんだ君たち。今はこんな話をしている場合ではないのだ。、、話がないと言うのならとりあえず一緒に来てもらお、、
「ありませんっ!私はただ、、財宝欲しさに、、自分の欲に負け、、このような愚かな行いをしてしまいました、、!
しかも私は、ダンジョンを見つけたというこの者の情報を、自分の手柄としようとしただけなのでございます、、!
そのため、このような乱暴な行いも完全に私、ワレジ族のダンマが招いたことでごさいます、、!
処罰は何であろうとお受けしますので、どうかこの者だけは見逃していただきたい、、!
この通りお願いするっっ!!」
そういうと大男は両膝と頭を床につき、
大きく屈強な体を小さく縮こませ、綺麗な土下座をした。
それはそれは見る者すべてに誠意が伝わってくるような不器用ながらも美しい土下座だった。
なんだこいつ、、。こいつ今、俺だけは見逃してほしい、ダンジョンの情報は俺が持ってて、それを自分が奪ったんだと言ったのか、、?
意味がわからない。俺もお前も、広間のガキの話を盗み聞きしただけじゃないか。
なぜ名前も知らない俺を、どんな処罰になるかもわからないのに、庇おうとしているんだ、、?
俺には男のとった行動の意味が全く理解できなかった。
ただ俺は動揺して、口を開けて固まっている
ことしかできていなかった。
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