大賢者皇女は死が嫌い

れふと。

第0話 ナランハの皇族

皇族の最たる役目はなんであろうかと聞いた時に、答えが被る人が何人いるだろうか。

外交をうまく進めていくこと、教育を推進すること、富を増やすこと、国の象徴たるべく豊かに暮らすこと、身を粉にして働くこと?

十人十色の回答が出てきて、満場一致であることはほぼないだろう。

では、この国の過去の皇族で最も素敵な皇族であったと言える時代はいつだったかと問われれば、驚くべきことにこれは満場一致するらしい。





「ねぇ、おばちゃん。皇族の人たちが一番大事にするべきことってなんだと思う?」


「難しいことを聞くね。ほら、オレンジとお釣り。何を作るんだ?」


八百屋のおばちゃんに五つのオレンジと、別の店で買ってきたであろうバターと砂糖を詰め込んだ袋を眺めながら嬉しそうにする女の子は顔をあげてやっぱり嬉しそうにしている。よほどこれから作るものが楽しみなのだろう。


「ふふ、お母さんが明日のために今日はオレンジのマフィン作ってくれるって。明日おばちゃんも食べにきていいよ」


「そう、それは楽しみだね、時間が空いたらぜひいただきに行こうか。お母さんにもよろしくね。そうだそれと、さっきの質問だけど、そりゃわからん」


八百屋のおばちゃんは笑みを浮かべると、おまけだよともう一つオレンジを女の子の袋に詰め込んでいうのだ。


「だけどね、最も素敵な皇族であったのは、ナランハ時代の皇族様だろうね。ほら、遅くなる前に帰んな」


「ふふ、うん! また明日! 実が結びますように!」


「あんたもね」


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