恋の湘南シラス丼

@ramia294

 

 世間では、生成AIの話題で賑やか。


 なんでも……、

 お話書いてくれるとか。

 お絵描きしてくれるとか。

 プログラミングしてくれるとか。

 子守歌を歌ってくれるとか。

 腕枕をしてくれるとか。


 その他、色々してくれそうです。

 AIだから、数学は、当然お得意に決まっています。


 では、では……。


 素数の数え上げ公式の秘密を証明してもらいましょう。


 私は早速、AIさんにお願いしようとして、

 思いとどまりました。


 

 その前に、私にはやりたい事が。

 どんなものでも、生成出来るなら、


 私がまだ、その姿を見ない……

 私だけには、現れてくれない……


 素敵な恋を

 

 ジェネレーティブAIさん、

 私の夢見る素敵な恋、

 私に届けてください。


 突然、画面に指示が、

 神奈川県の江ノ島へ行けと。


 恋の生成AI。

 ラブジェネレーティブAI、

 略して、ラブジェネ?

 何処かで聞いた事が……、


 却下。


 単純に、

 ラブちゃんにしましょう。


 ラブちゃんの導き通り、

 私は江ノ島へ。

 恋といえば、夏の湘南。


 眩しい光を照り返す波。

 白い帆が、風を抱きしめ。

 ヨットが滑る、青い海。

 ポッカリ浮かんだ白い雲。

 ゆっくり滑る、青い空。

 ここは、夏の似合う。

 素敵な恋の聖地、

 湘南。


 ラブちゃん、

 夏にはまだ少し、

 半歩早いですが……。

 

 とりあえず江ノ島に、到着。


 今は、お昼。

 朝の早かった今日。

 お腹が空きました。

 何処かで、お昼ごはんを食べましょう。


 ラブちゃんおすすめ、

 生シラスの丼、

 江ノ島の食堂。

 名物ですか?


 注文しました。

 

 食堂には、荷物を持った観光客らしき方が、チラホラ。

 

 私のフワフワのワンピース。

 つばの大きな帽子は、夏を先取り。

 恋の準備は、バッチリ。

 普段は、デニムか白衣しか知らない私。

 観光客代表おのぼりさんは、私?


 シラス丼が、運ばれて来ました。

 

 ん?

 美味しくありません。

 生臭さが、鼻につきます。


 名物なんて、そんなもの。

 我慢して、食べました。


 お店を出ると、これからどうすれば良いのかなと、ラブちゃんを呼び出しました。


 そこへ、観光客の素敵な男性の方が、声をかけて来ました。

 もしや、この方が恋のお相手?

 ラブちゃんの選んだお方?


「シラス丼。美味しかったですか?」


 私は、正直に不味かったと答えました。


「せっかくの旅行。残念です」


 確かに残念。

 その方とのシラス丼のお話は、恋のお話まで発展せず。

 気を取り直して、もっと美味しいシラス丼を探してみましょう。 


 恋を探す旅は、いつの間にか、シラス丼を探す目的に。

 でも初めての土地。

 右も左もわからない?


 右や左は、お茶碗とお箸でわかります。

 しかし、北や南はどちらでしょう?


 美味しいシラス丼のお店だって、もちろん知りません。

 知っていれば、あのお店には入りません。

 ここは、ラブちゃんに訊いてみましょう。

 ラブちゃん、専門外ですが、大丈夫?


 ラブちゃん、さすがジェネレーティブAI。

 専門外でも答えてくれます。


 橋を渡り、右へ折れます。

 小さな漁港。

 ここで訊けばわかるとの事。

 漁師らしいおじさんに訊ねてみました。

 陽に焼けたその顔。


 見かけと違うその親切。

 笑顔と優しさ。

 ダンディなその声。

 おじさんというには、まだ若いおじさんは、教えてくれました。


 江ノ電の駅を3つ。

 小さな路地の目立たないお店。

 あなたは、きっと満足をするでしょう。


 そのお店に、到着。


 うなりました。

 本物のシラス丼。

 なんと美味しい物なのでしょう。

 海に向かって御礼です。

 おじさんにも、感謝です。


 この旅で、私の恋は、見つかりませんでしたが、生シラスという世界の奇跡を知る事が出来ました。


 帰りましょう。

 ラブちゃんとお仕事の続きを再開です。


 帰りは、関西方面。

 新幹線。

 在来線。

 小さな駅。


 ラブちゃん、お仕事の続きしましょう。

 ジェネレーティブエーアイ。

 ラブちゃんの恋の生成は、上手くいきませんでしたが、本職は優秀な出来る子です。


 もちろん、世界の根源はそんなに簡単に、秘密を覗かせてはくれません。

 相変わらずの徹夜のお仕事。

 缶コーヒーを求めて、デニムと白衣の私は、自動販売機コーナーへ。


 先客がお一人。

 私を見て、質問されました。


「ここで、白衣とは珍しい。何故白衣を?」


 ダンディなその声、

 何処かで……。


「私は、何を着ても似合わないし、楽なので」


 正直に答えてしまいました。


「フワフワのワンピース。似合ってましたよ」


 その姿。

 おじさんというには、まだ若いおじさん。

 

「もしや、あなたは、小さな漁港の漁師のおじさん。何故ここに?」


 見かけと違って、私よりも年下のその方。

 お隣で研究中の方でした。


 突然、出張の指示。

 しかも、手違い。

 神奈川まで、手違い出張していたとのこと。


 手違い?

 研究職で?

 そんな事って、あり得ません。


 ふたりで、缶コーヒーを飲む私たち。

 窓の外には、星が瞬き。

 月は笑っています。


 ラブちゃんの正体は、お月さま?


 今、ラブちゃんから、ご近所でも食べること可能な美味しいシラス丼のお店の情報。

 届きました。


 ラブちゃん。

 そのお仕事、

 優秀。


 手抜かりなし。


 私から、おじさんへ。


「私と恋のシラス丼を食べに行きませんか?」


           (⁠ ⁠˘⁠ ⁠³⁠˘⁠)⁠♥チュットLov

      






 

 

 

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