第一章 転生

第一譚 転生失敗!

・・・・・・目が見えない。

それだけじゃない。

鼻も効かない。

耳も聞こえない。

舌はおろか身体すべてが石になったかのように動かない。


(・・・なんだこれ?)


目は見えないのに視界に映る景色は絶え間なく変化して俺を惑わせる。

赤から白へ。白から黒へ。黒から青へ。そしてまた白へと景色は多彩な顔を見せる。


(目がチカチカしてきたんだがこれいつまで見せられるんだ?)


何回変化したかわからなくなってきた頃、白と黒が現れた。


白と黒は溶け合い、新しい色になる。


(そういえば俺って何してたんだっけ・・・・思い出せない・・・・)


駅前のベンチで寝ていたことは覚えている。妹のLINEに返信したことも覚えている。

ただその先がどうやっても思い出せない。頭にもやがかかってるみたいだ。


(ここは夢の中なのか?俺は寝てるのか・・・?)


考えている間にも色同士は結合し、分裂し、破壊され、吸収しながら新しい色になってゆく。


唐突に起きた変化。


(喰ってる?)


黒が白を呑み込み、白が消える。そこで一度色の変化は止まる。


(あ、変わった。)


黄緑色が黒から出てきて、どんどん黒を小さくしていく。

その黄緑色からなくなったはずの白が一緒に出てきてどんどん膨らむ。

それに乗せられたかのように他の色もどんどん膨らむ。

もう黒はさっきの大きさの半分もない。


(俺は何を見せられてるんだ?)


五感を失っているであろう状況で見える景色なんて気味が悪くて仕方ない。

本当にいつまでこうしていればいいんだ?


「・・・・・接続完了」


(は?なんて?)

次の瞬間、視界はすべて白に染まった。

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んん・・・


頭が痛い・・・

頭の奥で木槌が暴れまわってるかのような痛みに一度は悶絶しようとしたもののできないことに気がついてやめた。


(どうなってんだろうなぁこれ・・・)


感覚はないのに意識だけは残っている。変な状態だ。


(どうしたもんかなぁ・・・)


頭に手を当てて考える。ざらざらとした肌の感覚が少しだけ俺を落ち着かせて・・・


(あれ?)



そう思った瞬間視界が開けた。


「お?」


そこはとても暗かった。かろうじて周りが見えるくらいのなけなしの光も頭上の木々に遮られてほとんど届いていない。

だが、そんなことは全く気にならない。なぜなら死後にこんなにもリアリスティックな場所に来ると言ったケースは俺の知る限り一つしかないからだ。

そう。誰もが一度は憧れる世界に俺は来た!これが真実だ。

これからすることを思えば心が躍る・・・

無双とかできんのかなぁ・・・最強、目指しちゃおっかな〜?

こうしてはいられん!まずは自分の姿を確認だ!


思い立つが早いか走り出す。ここでの姿はどうなっているのか。まるでガチャの結果を待っているかのような奇妙な高揚感である。


そして数分走った後、泉っぽいのを見つけた。やっと今世の俺の姿とご対面だ。


「さて?俺の姿は〜?」


やけに声がガラガラで聞き取りづらい。そんな種族になったのだろうか?なんにせよ何になったのかは見れば分かる話。さあ!どうだ!


水面に映った俺の姿。緑色の肌に禿げ上がった頭、唇の端からはみ出た牙が口だけでなく顔の形を歪に見せている。


泉の片隅にて・・・ゴブリンが一糸纏わぬ姿で水の中を覗いていた。


「これが俺?」


・・・なんか違う。

(魔物に転生したならしたでもう少しかっこいい系とかかわいい系とかさぁ・・・)

ラノベではドラゴンとかスライムとか最低限魔物に転生したとしても許容できる見た目になっていたが・・・・・流石にゴブリンなんて聞いたことはない。神様も趣味が悪いぜ。


出鼻をくじかれた気分だがまあいい。俺の姿はこんなんでも一応はここが異世界であることの確認がとれた。俺の冒険はここから始まるのだ!


「ゴブリン上等ぉ!っしゃあぁぁぁ!!やってやんぜぇぇぇ!」

わくわくが止まらない。これからの不安を思っても有り余るくらいだ。

無双をしたい!そのためにも立派に生きる!俺は生きるぞ!





ガブッ


へ?


その瞬間目の前が真っ暗になった。

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「あの人間風情はどうしてる?」

「どうやら親戚の創った蛇に食べられたようですね。」

「えぇー、つまらないじゃないそんなのー」

「仕方がないですよ。嫌がらせで器をゴブリンにした姉上の手落ちです。」

「あーあ、お父さんもあんたもあたしのこといじめるんだー」

「日頃からもっとしっかりやれということです。」

「はいはい。次はちゃんと人間にしますよーだ」

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閲覧数がまったく伸びずとも二人見に来てくれてるだけで嬉しいものなのですね。


武尾たぬきさん。フォローをありがとうございます!!モチベになりました!!


他の方のように一日一話投稿は難しいですがこれからもがんばりますので応援をよろしくおねがいします!


さてさて。早速我が家の主人公が一度目の死を迎えましたね。

序章だけで死亡回数が何回になることやらw


それではまた次の機会に!よい睡眠を!

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