ね、行く?

山瀬君の運転で、無事帰って来た。

山瀬君の家が一番近かっかたので、先に山瀬をおろした。

「じゃ、お疲れ〜」

「うん、バイバイ」


「次は創くんの家だね」

「ね、このあとまだ時間ある?」

創は、少し真面目な顔で言った。

「え?ある…けど…」

「車なら、海、近いよ」

「海?」

「行く?」

創はニヤッとした。

「うん、行く」

みずきが、元気よく言ったので、創は笑った。


天気が崩れてきて、正直キレイな海とは言えなかった。

とはいえ、海は海。

いつもとは、かけ離れた景色にテンションがあがる。

「寒いけど、いいね。海」

「うん」

歩きづらい浜辺を2人で歩く。

(こんな、シチュエーション、彼女に悪いな…)

「ね、彼女とはうまくいってるの?」

「ん…。なんかね、俺、忙しくて。そう言ってるのに、会いたい会いたいって言われて…。少しだけ、困ってる…」

「ふ~ん。でも、好かれてるってことだから、もう少し頑張ったら?」

「うん…、そだね」


創は、彼女の話をされたのが嫌だったのか、みずきの前をスタスタ歩く。

みずきは、ついていくのがやっとだった。

創は、海水が溜まっている場所を、ヒョイッとジャンプして渡った。

「創くん、待って」

「ん?」

「私、そこ行けない」

「何で?」

「そんなにジャンプ力ないもん」

「助走つければ大丈夫」

「無理だよ」

「ほら」

創は、両手を前に出した。

「…うん」

みすぎは、ジャンプをして、創の手を掴んだ。

着地の時、勢いで体が、触れた。

「…は~、行けた」

みずきは、なるべ早く体を離した。

「うん。…あっち。行こ」

創は、また先に歩く。

今度は、ゆっくり歩いた。


創は、落ちてる石を拾った。

「俺ね、元野球部」

「そうなの?」

創は、石を海に向かって投げた。

「すごーい!あんな遠くまで…」

「だろ」

創は得意そうに言った。

「私、全然だめなの。ソフトボール投げとか、6メートルくらいしか飛ばなくて…」

みずきも石を海に向かって投げた。

「ね?」

「…。…ん…」

「いや、引かないでよ!」

2人は笑った。

「もっと、こう…。体、全体を…こうっ」 

創は、身振り手振りで説明した。

「うーん、こうか…」

みずきは、もう一回投げてみた。 

「わっ!さっきより飛んだよ!」

みずきは、創の方を見て言った。

「…。…ん…」

「いや、まだ、引いてんじゃん…」

2人はまた笑った。


「寒いね。もう行こっか」

創が言った。

みずきはもう少し居たかった。

「そうだね…」

また同じ道をたどる。

あの水たまりに近づくと、創は大きく迂回した。

「…」

「こっちからの方が、歩きやすい」

「そっか…」(さっき言えよ)


「…ね」

「ん?」

「これさ、」

創は、指にはめているペアリングを触って言った。

「どうしたらいいと思う?」

「え…。だから、もう少し頑張ったら?って…」(さっき言ったけど…)

「そっか…」

(あ…、外してって言えば良かったのかな…。でも…、さすがに…)

創は、口数少なく車に向かって歩いた。

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