13日目:一人の戦い。最終章??

 感慨深い古巣との別れを終え、「ボク」は一路新天地へ!

 っと、その前に腹ごなしをと思い立ち、入社当時から贔屓にしていたラーメン屋へ寄ることに。ここは古巣よりも逆に馴染みが深いのではないだろうか?と思うほど通い詰めたその店。

 だが、海外出店だか何だかで半年間の休業の張り紙を見かけたのが10ヵ月前。

 それっきりきていなかったが、今、最後の望みをかけて!と思ったが、やはりというかなんというか、あえなく撃沈。まぁ、そうだよね。

 結局、思い出の味は思い出のままで終わってしまった。だが、空腹だけはどうしようもなかったので、無念とばかりに、、、す〇屋へ。そして、デザートにコンビニ(○ーソン)でスイーツと甘未を購入し、いざ高速へ。

 え?最後なんだからもう少し思い出の味に浸っては?って、いやいや、ここだって十分思い出の場所だよ?何せ独身時代の住処の目の前で、何度も利用させてもらったし?基本、自炊の「ボク」としては珍しく、片手で収まらないくらいは来ている店舗だよ?色々あって、なかなか寄り付きづらくなっていた地域ではあるけど、最後は社会人始まりの地でディナーも悪くないかな?ってなもんよ?

 まぁ、過ぎてしまった今になって考えてみれば、もっといろいろ好きなお店もあったし、何もチェーン店を選ばなくっても…と思わなくもないけど、その時はもう、疲れとやり切った感から思考がおかしな方向に行っていたんだろうねぇ。

 と、そんなこんなで、定番のおろしポン酢の乗った牛丼を注文して、ぱくり。もぐもぐ、うむ、普通!不味くはないよ?不味くはないんだけど、すっごい美味しいかって聞かれると、そうでもない。まぁでも、ソウルフードってそういうものじゃない?安心して食べれるけど、特別感はないっていうかさ…え?今日は特別な日?えーと、そうね、人生でたった一回きりの日だね?でもさ、こういう日にこそ求めるものが、ソウルフードだよね~なんて、もうぐだぐだの思考回路で夕食を食べ進める。

 というか、折角だから書かせてもらうけど、豚丼も牛丼も一時期より味が落ちたような気がするんだけど、、、そう思うのは「ボク」だけかしら?脂分は増えたけど、味は落ちた感じ?うまくは言えないけど、さ。

 因みに「ボク」はす○家よりは、ま○屋派です!(笑)

 とまぁ、そんなこんなで、改めて、一路新天地へ!

 ちなみに、この間、会社の知り合いに会ったらどうしよう?と内心、すっごいびくびくしていて、最後の牛丼の味何て全く覚えていないのは、ご愛嬌さ。


 圧迫感と急カーブの多い高速をスリリングに走り抜け、夜の首都高へ。

 素敵な夜景を一望しながら、見納めのドライブ…としゃれ込めるわけがない。

 車は多いわ、首都高慣れていないわで、ほぼ自分の周囲とナビだけに視線のすべてを使ってしまっている状況。夜景を堪能する余裕なんてありゃしない。

 というか、首都高ってなんでこうもわかりづらい作りなのだろうか?東○道に出るまでの数少ない分岐にいつも四苦八苦してしまう。何度走っても覚えられない車線、そして間違えるとどこに連れていかれ、そしてどうやって戻ればいいのかもわからなくなる恐怖。都会って怖い。

 その上、首都高に入るまではほぼ全走行区間を高い壁で覆われているため、基本夜景も何もない。

 ただ、まぁ、途中のみ○とみ○いの夜景だけは、運転しながらでも少し落ち着いてみることができるポイントがある(そこの夜景は「ボク」の結構お気に入りだったりする)。とりあえず、そこだけでも堪能しようと思い、最後かもしれない夜景に目を凝らす。。。


 あーこの夜景を見ていて思い出したわ~

 ここで一つ「おかたん」とのラブラブエピソード(?)を披露しようと思う。

 「ボク」がこの地に就職してきた当初、お上りさん感覚で結構いろんなスポットを巡ったものだった。中でも、ここみ○とみ○いの観覧車は有名で、恋人たちの絶好のロマンチックスポットなんだとか?で、実際に行ってみたのだが、確かにネオンの明かりが神々しく、時々刻々と変化するそれは見ていて飽きないものがあった。

だが、それ以上に「ボク」を感動させたのは、黒い海と空を背景に静かに立たずむビル群だった。その、窓から延びる淡い明かりとそれに映し出されたシルエットが、さながら滅び去った人類の痕跡の様に見え、その幻想的な風景に心を打たれたものだった。さらに、その夜景を見ることができるスポットも、道路に埋め込み式の照明が淡く、下から街路樹を照らし、その雰囲気といったら筆舌に尽くしがたいものがあった。

 だから、その感動を、当時まだまだ恋人というランクだった「おかたん」と共有したくて、連れて行ったことがある。

 それは赴任してから、初めてのデートの日。

 当然「ボク」は下調べで、いろいろ歩き回った挙句、ここぞというスポット(先述の)を厳選している。限られた時間の中、わざと遅い時間に買い物に出てみたり、夜のランニングとしゃれ込んでみたりと、それはもう自分で言うのもなんだが、涙ぐましいまでの下調べを実施していた。その上で連れて行った一押しの夜景群にきっと大いに感動してくれるだろうと、男心に夢想しながら、迎えた当日。

 ショッピングやらなんやらと考え着く限りのデートプランでもっておもてなしした後、件の夜景スポットへ。何気ない振りを装いつつ誘い、

 『 あーそういえば、ここら辺って、結構夜景が有名らしいよ~その中でも結構いいらしいのがこの先にあって…』

 といいながら、ビルの合間を歩いていく。そして、急に開けるそのお勧めスポットの手前で、一人歩調を早くし、追いついてきた「おかたん」に両手を広げて、合図する。

 『 ほら、すごい夜景でしょ?』

 といった「ボク」。100点満点に近い演出だったのではないかと、この時大根役者である「ボク」は、自分のデートプランの締めくくりに酔っていた。それはもう、初心な男の子にはこれくらいは許してもらいたいものだ。ただ、これに対して、「おかたん」の見せた反応はというと、、、

 『 ホント凄いね~この明かりはどうやってつけているのかなぁ?一晩でどれくらいの電気料なんだろう?』

 と、来たものだ。そう、忘れていたが、「おかたん」は理系女子。雰囲気という曖昧なものよりも、理論を優先するという変態なのだった。

その時の「ボク」のやるせなさといったら、ない。

もう、クイズ「男心!」みたいな番組で、

 『 この後この娘はなんと返すのが正解でしょうか?』

 という問題がでたら、もう、

 『 ざんね~ん!』

 ではなく、

 『 帰れ!』

 と、司会のみの○んたさんが、険しい顔で思わず言ってしまうくらいの酷い回答だったと思う。

 そんな回答をされた「ボク」はといえば、実際は平静を装いつつも、心の中では膝から崩れ落ち、いや、砂になってしまっていたと記憶している。そして、誓ったのだ、もうこの娘を雰囲気のいいデートスポットになぞ連れて行くものかと。

 だがまぁ、思えば出会った当初から変な子ではあったのだ、「おかたん」は。

 今でもありありと思い返すことができる。大学の部活に入部してから、数日が経った頃、壁に向かって振り子突きをしながら、一人首をひねる「おかたん」の後姿を。普通の子らは、それぞれ打ち解けた人同士で談笑したりしている最中に、である。

まったく、ほんとぉに変な娘だったのだなぁなどと、おかしな感慨に耽りそうになって、ふと我に返る。

 『 やべっこれって死亡フラグなんじゃね?』

 そう、今は運転中。

 丁度首都高に入り、車数が増えたのに、速度は何故か上がるという訳の分からなさに、夢想モードなど吹っ飛んでしまう。流れゆく景色に、色々な思い出がフィードバックしてくるのだが、もう、そんなことは言っていられない。

 車邪魔!道分からん!なんでこんなに混んでるんだよ!とついつい、罵詈雑言を口にしながらもスリリングなドライブを続けていく。

 というか、首都高は使用頻度としてはそれなりではあるが、通過するだけだったので、そこまで思い入れがない。だから、遠目にスカイツリーを見ても、金色のう〇ちと言われるオブジェを見ても何の感動もない。というか、もうすでに眠い。。。一瞬閉じかけた瞼の裏で、脳内を

 『 目を閉じ~れば億千の星~っっっっ!』

 っという歌がよぎり、、、

 って、あぶな!マジで星になるとこだった!食後の1時間くらいは本当にヤバイ!

仕方がないので最終手段、一人カラオケ大会にシフトすることとして、スピーカーのボリュームを上げ、歌える曲を選曲する。


 と、そんなあほなことを一人でやりつつ、何とか首都高を抜けて、東○道へ出ることができたのだった。でも、ここからはマジで何もない。道もひたすらまっすぐだし、車も(事故でもない限り)詰まるようなことはない。時間帯も時間帯なので、行きも戻りもトラックしかいない。いや、トラックすらいない。

 だが、首都高途中であまりの眠さに飲んだ強○打破が聞いているせいか、一人カラオケ大会で覚醒したせいなのか、はたまたこの真っ暗な高速道路を一人走り続ける状況に精神が高ぶっているせいなのかわからないが、何故か眠さは吹っ飛んでいた。

 そんな寂しい道をひた走るときのお供はといえば、そう稲○淳○先生の語りである。「おかたん」の勧めで、年一でライブに行くようになってから、もうすっかりヘビーリスナーになってしまっている恒例の語りをかけつつ、陽気に駆ける東○道。

なんて韻を踏んで陽気に始まった東○道のドライブだったのだが、、、後悔はいつもあとからやってくる。


 当初はどこかで仮眠をしつつ、それでも時間内につければいいや位に考えていたお気楽な旅程だったのだが、1時間後。さすがに気味が悪くなってきた。

 気付けば時刻は午前2時。もう、ばっちり(何が?)の時間である。

 というか、周りの暗さと、語りの暗さからくる底冷えのような恐怖から、気付けば休憩ができなくなってしまっていた。

 だってそうでしょ?パーキングで寝てて、ふと目を覚ましたら誰かが暗闇の向こうから覗いてたら・・・なんてことを想像したら、おちおち仮眠もできやしないじゃない?!。

 そう、ボクは確信してしまったのだ、気付かぬうちに稲川の罠にはまり、デスマーチが始まってしまっていた(自業自得)ことを。

 だから、怖さを紛らわすためと、眠気に襲われないために再度、一人カラオケ大会を開催しつつ、夜の高速道路をひた走るのだった。


 そうこうしているうちに、夜も白け、日が昇り始める。

 高速を運転しながらご来光を拝むなんて、人生であと何回あるんだろうか?などと思いながら、明るさも手伝って、少し安心し始めたか休憩を意識し始めた「ボク」。ではあったが、まーパーキングがまぁない。

 地元に近づけば近づくほど、無人のトイレと自販機だけのパーキングが目立つようになる。山を抜ける区間については本当に何もない。ノー休憩での完走が見えてきた刹那、地元でも有名な(ソフトクリームが)サービスエリアの看板が見えてきた。それを見た瞬間の「ボク」の心の内といったらそう、

 『 っ!生き残ったぞ~』

 である。気分はもう無人島から手漕ぎボート一つで生還したときのもののよう。

結局はそこで仮眠と朝食をとり、なんとかかんとか超長距離の長旅の終わりが見えたのであった。


 そして8時間の長旅(実際には7時間を切るか切らないかだったのは秘密)を終えて、新居近くの不動産屋についたのが9時の少し前。

 引越屋との約束が10時なので、あまり悠長なことを言っていられないのではないか?と思う方もいるだろうが、何を隠そう、9時開店。電話でなんとか早めに対応できないか調整をしてみたのだが、早くは対応しない、とけんもほろろに言われてしまっている(まぁ、入居日程とかを融通してもらっている手前、無理も言えないんだけど)。

 なので、残り時間は近くのコンビニで時間を潰す(結果いつの間にやら時間が過ぎて、9時20分ごろになってしまっていたのは内緒である)。そして、開店した店で一通りの手続きを終え、いざ新居へ!

 こうして「ボク」の長い旅路は完結し、そして、また新たな長い一日が始まったのであった。

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