第8話 ラジオの収録現場へ

「ママはお仕事してくるから、いい子で待っていてね」


 俺はブンカ放送に来ていた。

 ガラスの向こう側に、ラジオブースがある。

 ベッドフォンにマイク、テーブルには構成台本。

 俺は……マジでラジオの収録現場に来たんだ。


「興味津々ね。スバルくん」

 

 隣で俺の手を握っている女性、マネージャーの桐島さんが笑う。

 桐島さんは、綾音の専属マネージャーだ。

 さらさらしたストレートの黒髪に、グレーのパンツスーツがパリッと決まっている。歳はたぶん綾音と同じくらいで、20代半ば。

 いかにも仕事ができそうな女性だ。

 あと忘れちゃいけないのが……ブラウスがはち切れそうなくらい胸が大きい人です。


 声優に専属マネージャーがつくのは異例のことで、普通は声優のマネージャーは営業先ごとに担当がつく。

 たとえば、アニメ制作会社ならAさんが担当、ゲーム制作ならBさんが担当、といったふうに。

 綾音が超人気声優だから、特別に専属マネージャーがついていた。


(さすが俺の推しだ。そんじょそこらの凡庸な声優とは次元が違うぜ)

 

「……スバルくん。声優のこと詳しいのね。まるで大人みたい」


(ヤバい! ついつい口に出してしまった!)


「へ? えーと……ま、ママから聞いたの! えへへ」

「? ……お仕事が終わるまで静かにしてね」


 今日の収録は、【この最低な世界に花束を】のアニメ3期の宣伝だ。


 出演キャストは、ヒロインを演じる綾音と、主人公の妹キャラを演じる梓川あずさ(あずさがわあずさ)だ。通称あずにゃん。ロリの声なら右に出る者がいない、かわいい声の持ち主。

 実物もロリぽっくて、身長140センチくらいで、胸がFカップはあると言われている。ツインテールがさらにロリ感を加速させている。

 

 あと、特別ゲストとして、原作を書いたラノベ作家——群城軍司(ぐんじょうぐんじ)が出演する。

 エモいラブコメを得意とするベテラン作家だが、俺はあまり好きではない。

 なぜなら——


「綾音ちゃん……今日もキレイだねえ」


 群城が綾音の手に触れた。

 いやらしい手つきで、ベタベタと。

 ニヤニヤと嫌な笑い方をする。


(あいつ! 何をしてやがる!)


 俺はガラスに顔をべったりくっつける。


「ははは……ありがとうございます」


 綾音が愛想笑いを浮かべている。

 俺にはわかる。綾音は明らかに無理をしている。


 俺が群城が嫌いな理由は……ある噂のせいだ。

 群城がある声優をストーカーして、自殺まで追い込んだという噂だ。

 いくら仕事とは言え、あんなクソ野郎に綾音を近づけたくない。 

 何かあれば、俺が助けないと……!

 そう静かに決意する、二歳児の俺だった。


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