第5話 人身事故

私が学校から、おじいちゃんの会社まで帰りに寄った時、なんか上の階がざわめいていた。


…なんだろう


と思って上の階に上がって部屋を見たら…


【そこにはキズだらけの妹が寝ていた】


私は、目を見開き、どうしたのか聞いた。

そうしたら…


『なっちゃん、カタツムリ獲りをしていたら、バックしてきた車の下敷きになっちゃったのよ』


『……!』


膝がガクガク震えるのを感じた。

どうしようもないくらい心臓がばくばくして、私は飛び出していってしまった。


会社を出てガソリンスタンドを通りすぎ、カタツムリのいる木を一瞥して歩道橋を駆け上がる。

歩道橋に駆け上がったあと、あるところで立ち止まり…


歩道橋から…見える、走り去る車たちを眺めていた。


【ここからあの車に…飛び降りようかな】


キズだらけになっていた妹が脳裏に浮かぶ。


『カタツムリ獲りなんて…しなきゃよかった』


…この時、一つのピースが、こぼれ落ちた。

欠けていく…欠けていく…

遠退く記憶と感情が私の心を奪っていった。


【飛び降りて車にひかれたい】


ピースが欠けた感情からは負しか生まれない。


一筋の涙がこぼれていった…


『…ゴマ』


歩道橋を抜ける風が吹く

その風が私の未来を削っていくようだった。


(続く)

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ネコとキスをした にゃんころもち @maruri33

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